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2021.05.31
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【復刻】 
​大航海時代のポルトガル 宣教師フロイスの日記 哀しみの旋律ファド
(そうして ボサノバ)​



アフリカからの奴隷労働者のリズム音楽を中心に
欧州の舞曲などが融合したSAMBA
そのSAMBAをJAZZなどの要素を加えて洗練させ
リズムをさらにシンプルにし
叙情的な歌詞をのせて歌うSamba Bossa Nova)が成立、流行
リオの有産階級のサロン音楽であり学生の音楽でもあり
ハッキリ言えば白人中心の音楽
そういう意味で、従来の黒人奴隷ルーツの
庶民の生活の中のブラジル音楽とは
少しNOVAな(新しい)BOSSA(傾向)である
SAMBAの楽器構成は打楽器中心だが
BOSSA NOVAではもっとシンプルになり、ギター中心
コード展開が美しくはっきりしている
殊に、私にとって印象的なのは
軽いシンプルなリズムに乗ったヴォーカルの
優しく哀愁を帯びたささやくような唱法
そこには、ブラジル人のルーツである「ポルトガル」
更には、そのポルトガルの「哀愁の旋律ファド」
そのファドに流れる「サウダーデ」という哀しみ感情がこもっていると思う
それらの要素について
以前、私が書いた過ログがあるので復刻してみよう
    ​―――― 復刻記事 ――――​
2008.12.29
大航海時代のポルトガル 宣教師フロイスの日記 哀しみの旋律ファド
私が以前、「お薦め web site」に入れていたある人物が
その日記の中で「昔のポルトガル商人の古い日記を読んでいる」と書いていた
大航海時代のヴァスコ・ダ・ガマあたりの時代のものなんだろうが
私も読みたいと思う
私にとってポルトガル人というと、まずルイス・フロイスである
16世紀の日本にイエスズ会の宣教師として来日
膨大な「フロイスの日本史」を書いてくれた後、長崎で亡くなっている
信長や秀吉にも謁見し、世界のいろいろな情報を彼らに披露して重宝された
フロイスはそんな信長や秀吉の容貌や性格その他もろもろの情報を
 first hand で日記に書き込んでいて
それが今や極めて貴重な時代の証言となっている
私も「フロイスの日本史」の全集をもっていて、以前はちびちび読んだ
そのフロイスの生涯の簡単な年表を、私なりに作ってみた
    ―――― フロイス年表 ――――
1532 リスボンに生まれる
1543 (ポルトガル船が種子島に漂着 鉄砲伝来)
1548 イエスズ会に入会 ゴア(インド)に向かう
1557 ゴアで哲学・神学を修得
1562 日本へ出発
1563 日本到着 31才
1569 織田信長に二条城で謁見
1583 日本史執筆開始
1586 大坂城で秀吉に謁見
1592 マカオへ出発
1595 マカオから帰国
1596 日本史執筆完了
1597 二十六聖人の殉教 殉教を記録 長崎で死亡
       ―――― ◇ ――――
イエスズ会というとフランシスコ・ザビエルである
そのザビエルのみならず、イエスズ会はバスク人中心に運営されてきた
イエスズ会というのは、特に発足当時は
ファナティックな宣教意識を持った、武力でもってでも
キリスト教化をいとわない戦闘的な宗教団体だった
またバスク人というのはフランスとスペイン国境の
ピレネー山脈あたりに住む欧州の謎の民族
スペインからの分離独立を目指してテロを繰り返している民族でもある
血液型がRHマイナスという特徴がある
この血液型を持った人はバスク人のDNAを持っている、とも言われる
奇妙なことに彼らの言語がそもそも印欧語に属さない謎の言語である
欧州で印欧語に属さない言葉なんて他には少ない
アジア系のフィンランドのラップ語とハンガリー語ぐらいである
多分、バスク人は印欧語を話す欧州の人々より先に
欧州にやって来た先住民なのだろう
バスク語には印欧語には無い「息を吸い込みながら発音する」という音があるという
一説によるとこの音は、長い期間、洞窟内で暮らした民族に特徴的な音だという
私の推測では、洞窟内ではふつうに発音すると反響してうるさすぎるので、息を吸い込みながら発音するという発声法が出来たのではないだろうか?
あくまで私の個人的な仮説だし
アフリカの最も古い民族
ブッシュマンも子の発音方法を持っている
ひょっとしてブッシュマンの系統の人たちが
「出アフリカ」をして、欧州へたどっりついて・・・
そういう想像もしてみたい
つまりバスク人は、氷河期に寒波を避けて洞窟内で暮らしていたのだろうと思う
また、クロマニヨン人の直系の子孫とも言われている
フランスではバスク人は味覚の鋭い人々として知られていて
レストランやビストロの経営者・シェフが多い
       ―――― ◇ ――――
ポルトガルは東洋にも、もちろん大きな足跡をのこしている
インドネシアにもポルトガル領があったし(マカッサルだったかな?)
もちろん香港の隣のマカオはインドのゴアとならんで
ポルトガルにとっては東洋の要衝
そういえば、ボンベイ支店の現地職員にもゴアの出身者がいて
ダ・シルヴァなんていかにもポルトガル系の名前を持っているカトリック信者だった
しかし、米国の妹の近所の住人の姓もダ・シルヴァである
彼女はセイロンの出身、肌の色は浅黒い
彼女の父親は英国人だが母親は現地人である
現地の名門の出身だという
確かに米国に住んで長いのに英国英語をしゃべる
ポルトガルはセイロンにも勢力を伸ばしていたらしい
マカオにはいまだにポルトガル語をしゃべるポルトガルの血をひいた
中国人のマイノリティー社会があるという
そのテレビのドキュメンタリー番組を見たことがある
徳島で亡くなったポルトガルの総領事モラエスも
小泉八雲に似た境遇の知日外国人文人である
日本に同情的なレポートを、ポルトガル総領事として本国に送っている
また文人としては、小説などを書き残している
徳島市内にモラエス通りという通りがあり、そこにかれの旧居があったらしい
その通りと並行した通りから山の方に入ったところに
私の母方の祖母の先祖代々の墓地がある
士族で神道の家系の者だけを葬ってあるという特殊な墓地である
ポルトガルというと種子島銃でもある
通説ではポルトガル人が種子島に持ち込んだ鉄砲(種子島銃)が
すぐに日本に普及したと言うことになっているが
日本の堺で大量生産された鉄砲はポルトガル方式の鉄砲でないようだ
弾込め方式などの方式が違うという
多分、中国とかそのあたりから導入した、もっと進化した鉄砲の技術を
日本は別ルートで取り入れてそれを改良したらしい
そうして日本人はたちまち数千丁の鉄砲を作ってしまった
これは当時世界最多の鉄砲の所持率だった
しかし、ポルトガル式の火縄銃ではないと言うことなのだから
ポルトガルに対する感謝も半分でいい
ポルトガルには行ったことがない
行ってみたい
特にリスボンの隣の大学町で古い町のコインブラ
コインブラって、響きが美しい
ポルトガル・ギターには二種類あって
・リスボン型
・コインブラ型
の2種に分かれる
ネック部分がまっすぐか?曲がっているか、という違いがある
       ーーーー ◇ ーーーー
去年、米国で、姪の結婚式があって私も招待された
ケープ・コッドというケネディー家などの別荘もある高級避暑地なのだが
そこのホテルでの3日間にもおよぶ長丁場の結婚式だったのだけれど
その結婚式にポルトガル人たちを招待した
その時期、米国で、私と義弟がアントレ・プレナーとして起業している 
WATER-FRONT のコンパウンド建設
その現場で雇用しているポルトガルからの出稼ぎ労働者たちである
その彼ら、ポルトガル人の人々と話していて、アマリア・ロドリゲスの話がでた
出たと言うより彼らがポルトガル人だと言うことで
私としてはある種のサーヴィス精神もあって彼女の話題を出したのだが
昔の映画に「過去のある愛情」というフランス映画がある
フランソワーズ・アルヌール ダニエル・ジュラン主演の
ポルトガルを舞台の男女の愛情のもつれを描いた映画だが
たしかまだ高校生だった私は、この映画を映画館にまで観に行った
というより「聴きに行った」と言う方が正しいかも知れない
というのも、この映画の主題歌「暗いはしけ」という歌を
アマリア・ロドリゲスというポルトガルの女性歌手が歌っていて
この歌はポルトガル独特のファドといわれるジャンルのものなのだが
その当時は世界的なヒット曲になっていて
私はその歌をラジオで聞いていて
ぜひ彼女が出演して歌っているというこの映画を観たかったわけだ
実際に行ったことがないのにこう言うのもいけないかも知れないが
隣国スペインと比較してポルトガルは、なんとはなしに
貧弱というか侘びしい印象がぬぐえない
写真などで見るポルトガルの典型的な映像は
黒い衣装をまとった猟師の女房などというものが多いから
そういう印象になるのかも知れない
そんな風情には、ヨーロッパと言うよりイベリア半島を
数百年にわたって支配したムーア人(アラブ人)の面影も
見えるような気がする
ファドというのは哀調を帯びた歌だ
スペイン風な激しいものとは対照的に淡い味わいで
まるで風になびく哀愁という風情がある
これにもやはりアラビアのエキゾティックな旋律が
混じり込んでいるような気がする
やはりポルトガルにはそういう軽い、そして哀愁を帯びたという持ち味があるのか
ポルトガル領だったブラジルの音楽、ボサノヴァも淡くて軽い
名画「黒いオルフェ」の主題歌「カルナヴァルの朝」も
サンバではあるがファドの哀愁が濃く溶け込んでいる
       ―――― ◇ ――――
ポルトガル語で「サウダーデ」という言葉がある
英語で近い言葉は solitude だろうけれど、それだけではない
この言葉は実に深くて微妙で・・・幅の広い意味のある言葉らしい
平凡社のスペインポルトガルを知る辞典には次のようにでている
       ―――― サウダーデ ――――
懐かしさ・未練・懐旧の情・愛惜・郷愁・ノスタルジー・孤愁
しかし、いずれの訳語もサウダーデの表す多面体的な意味の
いづれかの面に対応するものであって
それが持つ意味の総体を示す訳語ではない
サウダーデとは、自分が愛情・情愛・愛着を抱いている
人あるいは事物(抽象的なものを含む)が
自分から遠く離れ近くにいない、またはいない時
あるいは自分がかつて愛情・情愛・愛着を抱いていた人あるいは事物が
永久に失われ完全に過去のものとなっている時、そうした人や事物を心に思い描いた折に心に浮かぶ、切ない・淋しい・苦い・悲しい・甘い・懐かしい・快い・心楽しいなどの形容詞をはじめ、これらに類するすべての形容詞によって
同時に修飾することのできる感情、心の動きを意味する語である
そこには、単にそうした人や事物を思い描いた時に、心に浮かぶ感情だけでなく
そうした人や事物をふたたび眼の前にしたいと願う思いも含まれている
サウダーデはこのように複雑で豊かな意味を持つ語であるから
外国語で1語によってその意味を表すことは不可能であることも
訳語としてあげられている種々の語の意味の一面しか表しておらず
思い出す対象によって訳語が異なるざるを得ないことも明らかであろう
また大切にしていた物を手放さざるを得なくなった時
心に感じる痛み・悲しみを伴う感情もサウダーデであり
家族・親友・恋人などと永く別れるときの惜別の情もまたサウダーデである
       ―――― ◇ ――――
これでは長々しくて大変だけれど、私が簡潔にまとめると
「愛着のあるものから離れていることから生ずる執着を含んだ喪失感・悲哀感」
なのではないだろうか?
つまり英語で言うと 
nostalgy や missing feeling や in solitude 
それらが、その核にあるのではないだろうか?
       ―――― ◇ ――――
ポルトガルは欧州の最先端、どん詰まりである
その先は茫漠たる大西洋である
コロンブスが数十日かけて到達した米大陸はその彼方であるが視界にはない
英国のコーンウォールの先端に文字通り 「LAND END」 という名前の岬がある
(米国の姪が結婚式をしてケープ・コッド近辺にも同名の避暑地がある
 一度、行ったことがあるが、ゲイの人たちの街として有名?)
陸地が切り落ちていて、そこからは見渡す限りの大西洋である
まだ見ないリスボンにも(リスボアというのがポルトガル語の発音)
やはりそんな荒涼として風景があるような気がする
大航海時代に船乗り達が未知の大海に乗り出した土地だ
そんな前例もない世界の果てへの恐ろしい航海に
船出して行った夫や父親、恋人など・・・
そんな彼らを想いつづけて帰りを待ち続けた切ない感情が
ポルトガルの女性達の心の中に染みついてファドになったのではないだろうか?
       ―――― ◇ ――――
「火宅の人」の作者、壇一雄が一時ポルトガルに滞在していたことがあって
昔に週刊朝日に連載していた随筆に自ら書いていたが
ポルトガルではイワシの塩焼きが安くて、またことさら美味であるという
さらにそれにレモンを搾ってかけると・・・
・・・言うまでもあるまい
       ―――― ◇ ――――
またアメリカでの結婚式パーティーでのポルトガルの人達との話にもどる
他の東海岸エリート白人連中に比べて遠慮がちなポルトガルの人々を気遣って
私はアマリア・ロドリゲスの歌が聞きたさに「過去のある愛情」を観に行ったこと
および壇一雄が好きだったというイワシの塩焼きがぜひ食べたいものだ・・・
などとしゃべると、彼らがいきなり私に抱きついてきて
「今度来たときには私たちの家に来てくれ!イワシの塩焼きをご馳走する 
 ポルトガルのワインも最高だよ」というのだ
それだけでは無い
一人が自分の荷物の中からアマリア・ロドリゲスのCDを数枚とりだして
「プレゼントする」といって聞かない
「せっかくのCDじゃないか?」と遠慮すると
「ここではいくらでも安く売っているから大丈夫」という
たしかにこの州にはポルトガル系住民や移民が多く
いわゆるポルトガル・スーパーまでもあるのだ
CDもオリジナルでは無く、焼いた複製である
遠慮無くいただくことにした
       ―――― ◇ ――――
フロイスからアマリア・ロドリゲスまで
本日の「大航海」もやっと終えて、無事に帰港となった
ああ、しんど!
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最終更新日  2021.05.31 00:49:10
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