去年、私達が住む古いマンションの1室が競売にかけられた。
昨日、今日の報道を見聞きして、あの部屋を手放したご一家は、今、どんなお気持ちだろうか。
まさか、分譲マンションに住み続けながら生活保護費を受領できるとは、ご存知なかったと思う。
既に、「芸能人K某の母親の住むマンションはここである」という情報が流れている。
それが本当であれば、そこは大規模開発された高層マンション群で、美しい公園、大型スーパー、小学校、中学校、地下鉄の駅、最先端の医療技術設備を誇る大病院も近いので、中古マンションで2千数百万という価格も納得できる。
自分達の住むマンションの1室が競売にかけられるということを知り得たのは、マンション管理組合の役員の任期中だったから。
毎月の役員会で、共益費の未収状況の報告があったからだ。
何号室のことであるかを知っているのは、管理組合理事長と管理を委託している管理会社のみ。
一般役員は、何号室のことであるかは、知らされない。
長期にわたって共益費の未収が続き、管理会社の顧問弁護士が作成した督促状が発送され、内容証明が発送された。
たぶん、共益費だけではなくて、世帯主が住宅ローンを組んでいる銀行への支払も滞ったのだろう。
結局は、その部屋は、裁判所の競売にかけられた。
競売情報は、インターネットで公開された。
部屋番号もわかった。
大きなタイプの部屋だった。
競売が成立し、価格も公開された。
私達が住むマンションは、築年数がずいぶん経ってしまっているので、落札価格は低いであろうと誰もが思っていたが、それを上回る価格で落札された。
それでも、10数年前に私達の小さい、小さい部屋に付いていた価格よりも低い価格だった。
住宅の価格と言うのはそういう下がり方をする。
思惑よりも高い価格がついて、抵当権を持つ銀行は少し安堵したことだろうけれど、住宅ローン破産したもとの持ち主には、すでに関係のないことだろう。
自宅マンションという資産が無くなって、住宅ローンは相殺になるのだろうか?
それとも、まだ、ローンだけが残るのだろうか。
たいていの人は、住宅ローンを組むときは、30年、35年という長期ローンを組むことになる。
それが精一杯だから。
ローン期間の半分まで払い終わったときに、借りた金額の元本は少しも減っていない。。。。とよく聞く。
それほど利子分の支払が多いということらしい。
自宅を購入することは、大部分の人にとっては、一生に一度あるか、ないか。。。という大事業なのだ。
それを手放さねばならない痛み。。。。。想像して余りある。
そして他人事ではない。
競売にかけられた部屋は、住宅会社が落札して売り出された。
アチコチにノボリが立てられて、案内板がかけらえて、「お気軽にご見学下さい。」とあった。
私と長男も後学のために見学させてもらった。
4LDの間取りで、ま新しくなった室内に、青畳の香りが清々しくて、洗濯室には、ま新しく設えた白い棚が眩しかった。
床面積が広くて、ウチの2倍くらいだった。
もちろん、先の住民の痕跡は100%消されていた。
購入される人は、気持ちよく新生活を始めることができるだろう。
安価な小さな中古マンションであっても、大事な住まいを手放すことは辛い。
たいていの人は、一度自宅を手放せば、二度と手に入れることはできないだろう。
だから、慎重に、堅実な計画を立てたはずなのに、どうにもできないことがおこるのだ。
そして、公的な支援は与えられない。
普通の人には、申請しようという発想さえなかっただろう。
かたや、はじめからムチャなローン設定をしていた芸能人には容易く公的な支援が与えられる。
生活保護費を受給したのは母親であるが。
長男と二人、見学を終えて玄関ポーチに出たら、胸が痛くなったことを覚えている。
憶えておこう。
ものごとには奥の手と言うものがあるらしい。
でも、私達には使えない。
誰にとっても住環境は大切だ。
子に障害があれば、尚更だ。
私はとてもこだわった。
これからも、こだわって守りぬきたい。
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