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カテゴリ:火山・地震情報の見方
先週12日、福島県と山形県の境にある吾妻連峰(いくつもの山が連なっています。最高峰は西吾妻山2035メートルです。ちなみに今回の規制の対象は、東側にある一切経山(1949メートル)、吾妻小富士(1707メートル)の方です)で、噴火警戒レベルがレベル1(平常)からレベル2(火口周辺規制)に上がりました。 結構唐突な話だったので、ビックリした方も多いかも知れませんね。 今回の噴火警戒レベルの上昇の理由など、気象庁が発表した内容と合わせて考えてみたいと思います。 吾妻山の噴火活動ですが、最後の噴火は昭和52(1977)年のことです。この時は小規模な噴火が起きました。 その後、平成20(2008)年11月に盛んな噴気活動がありまして、福島市内に火山性ガスが流れ込んだのが原因と思われる異臭騒ぎが起きましたが、噴火は起きませんでした。 21世紀になってからの活動を見てみると、過去14年間の間に7千回近い火山性地震が観測されていますし(ちなみに今回より、平成13(2001)年と平成16(2004)年の方が月間地震数は多いです)、火山性微動も平成22(2010)年頃より増加する傾向があります。 そして今回はですが、12月12日に34分もの長めの火山性微動が観測され、それと同時に浄土平観測点(大穴火口の東南東約1キロにあります) にある傾斜計に、わずかながら山体膨張のデータが確認されたため(GNSS連続観測には変化は記録されていません)、警戒レベルを素早く上げることにしたようです(ちなみに、山体膨張は一時的だったようで、今はもとの基準に戻っています)。 ここで少し脱線して、用語解説を少ししたいと思います。 火山性微動と言う言葉がありますが、これは火山地下でマグマや水蒸気が移動したり、地下水が沸騰した結果発生する微細な震動で、気象庁や火山の研究家が神経をとがらせているデータのひとつです。 というのも、火山性微動が起きているときと言うのは、マグマが上昇したり、地下水がマグマ溜まり方向に移動して内圧が高まっている証拠だからです。 したがって、火山学者は、火山性地震が少しぐらい増えても対して驚きませんが、火山性微動が頻発化すると、噴火が近いと見て緊張するのです。 と、話を元に戻します。 今回の吾妻山ですが、12日に一度だけ火山性微動と山体膨張が確認されましたが、それ以降は観測されていません。 火山性地震はと言うと、12日は48回起きましたが(参考までに、10日は37回、11日は24回、13日は13回、14日と15日が1回ずつです)、普段の吾妻山の活動状況から見ると、回数的には 取り立てて大きくなったという感じはありません。 また地震の起きている場所も地下なので、マグマが岩盤を破壊しながら上がってきているという感じもありません。 つまり、警戒レベルは上昇しましたが、現時点で噴火が差し迫っている兆候はなさそうに思います。 にもかかわらず今回何故警戒レベルが上げられたかですが、やはり御嶽山噴火の影響ではないかと思います。 御嶽山噴火の時、気象庁は噴火警戒レベル2への上昇を検討しましたが、その結論が出せないうちに噴火になってしまった経緯がありました(下手に警報を出すと、観光客の激減や、風評被害になる場合が多いので、気象庁はいつも慎重な判断をすることが多いのです)。 同じ轍を踏むまいと、少しでも怪しい兆候があると、積極的に注意を促しているように感じます。 ただ吾妻山に関して言えば、過去15年ぐらいの活動状況を見ていると、直近で噴火が起きるかどうかは断言できませんが、活動は活発になってきており(特に火山性地震と火山性微動が集中しているのが、一切経山から大穴火口にかけて狭いエリアに集中してることが、嫌な感じです)、いつ小規模な噴火が起きてもおかしくない状況にあります。 火口周辺規制を出したタイミングが何故今なのかと言うことに、異論や疑問は出るかも知れませんが、気象庁が噴火警戒レベルを上げた懸念材料は十分そろっていそうです。 噴火が起きるかどうかはわかりませんが、いつそうなっても落ち着いて行動できるよう、頃が前をしておきたいですね。 それではまた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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