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カテゴリ:為替・市場
超久々の為替ネタです。 昨日の夜、何気なくファイナンス画面の為替相場の動きを見ていたら、なにやらスイスフラン/円の所に巨大なローソク足(株価や為替相場の値動きを、時系列に表した図です。これひとつで始値と終値、高値と安値をグラフとして見ることが出来ます)が、一気に突き抜けて巨大な壁を作っていました。 「へ? 何事?」 と思わず調べてみました。 すると、スイス国立銀行が昨日発表した声明によって、パニック相場になっていたことが分かりました。 その事情に入る前に、ヨーロッパの通貨について少し説明したいと思います。 現在ヨーロッパの多くの国が採用していて、世界第2位の流通量を誇っているのが、ユーロですが、ユーロを採用していない国も多くあります。 その筆頭はかつての世界帝国イギリスがいまだに堅持しているポンド、非EU国家であるスウェーデンのクローナ、ノルウェーのクローネ、EUに加入したいけど加入できず、いまだ自国通貨を使っているハンガリーのフォリントなど、いくつもあります。 その中でもっとも信用度が高いと定評があるのが、スイスの通貨スイス・フランです。 何故スイス・フランの信用度が高いかと言えば、スイスが政治的にも経済的にも安定しており、武装中立国としても確固たる地位にあることが、安全通貨と言われる大きな理由でしょう。 したがって、小国であるにもかかわらずスイス・フランの信用度は高く、「金より堅い」とも言われる安定さをもっています。世界で取引されている通貨量はなんと第5位です(1位は米ドル、2位はユーロ、3位4位は日本の円とイギリス・ポンドが競り合っています)。政局や経済事情の不安定な国の資産家などは、安全資産として、スイス・フランを積み上げる傾向があります。 あ、ちなみにゴルゴ13が取引しているメインバンクは、スイス銀行です(どうでも言い話ですが)。 さてそのスイスですが、金融政策は、近接する経済圏(正確に言えば、国境を接する国は全てユーロなので、スイス・フランは、ユーロの海の中に漂う孤島です)であるユーロとのパワーバランスを常に意識しています。 スイスは、金融サービスや精密機械など、世界的に定評がある基幹産業を持っていますが、巨大経済圏ユーロに比べれば、極めて小さい経済基盤しかありません。スイスの国内産業は、輸出型の経済であることもあり、スイス・フラン高/ユーロ安になり過ぎることは、自国の製造業にとって望ましくありません。 元々買われる傾向のあるところに加えて、特にリーマンショック以降、ユーロ圏の景気後退が深刻なため、スイス・フランへの流入が輪をかけて多くなっていることは、スイスにとって悩みの種、度々市場介入(スイス・フラン売りユーロ買い介入)をおこなってきました(防衛ラインは、1ユーロ=1.2スイス・フランと公言していました)。 このスイス銀行の介入により、1ユーロ=1.2スイス・フランのラインを維持してきました。 これによって自国の産業を支えてきたスイスですが、最近はその弊害に悩みを持つようになってきました。 というのは、ユーロ圏は低迷から抜け出す気配が無く、スイス・フラン買いが止まらないため、今後も無制限にユーロを買わなければならない羽目になってきたのです。 現在の状況では、ユーロ圏の経済が回復し、ユーロの価値が上昇するのはまだだいぶ先という感じです(その前に自壊する可能性もゼロではありません)。しかもユーロを積み立てれば積み立てるほど、使えないお金が増えるわけで(一度に放出すれば、ユーロは大暴落しちゃいます)、国の財政にマイナスになりますし、破綻すれば紙くずになります。 どちらに転んでも、スイス銀行は国費をかけて、自国経済を破綻させる可能性があるユーロを買い続けていると言うことです。 したがってスイス銀行は、スイス・フラン高を抑制する介入政策を撤廃することにしたのです。 昨日その発表がなされると、凄まじいことが起きました。 今までスイス・フランを持ちたいと思いつつも、スイス銀行の介入によって損をすることを恐れて買えないでいた市場は、一気にスイス・フラン買いに走りました。わずか20分で、1ユーロ=0.9スイス・フランになるという、30パーセント以上上昇する暴騰状態になりました(ちなみにスイス・フラン/円も、つられる形で急上昇し、なんと115円から165円越えまで暴騰しました。1日経った今日は135~137円位で落ち着いています)。 あまりの暴騰ぶりに、ロンドン市場では、一時スイス・フランの取引は全面的に停止する事態になりました。 その煽りを受けて昨日ニューヨーク市場も、今日の東京市場も株価は急降下し、円高傾向になるなど、余波は続いています。 まぁ、来週になれば落ち着いてくるでしょうけど、本当にビックリな1日でした。 で、私はと言うと、たまたま昨日タイミングがあってその大混乱ぶりを見ることになりましたが、特に何をしたわけでもないので、なーんにも良いことも悪いこともありませんでした(汗)。 もし寸前で波に乗っていたら、「俺の時代来た!」と大儲けできたか、「破産じゃ!」と大損してPCの前で絶命しているかどっちだったでしょうねぇ(最近、波に乗り遅れて参加できずに終了になる事多いので、確率的には大損している可能性の方が高そうですけどね・汗)。どちらにしても、心臓に悪い思いをしたことは間違いなさそうです。 今回の件で、すでにドイツ銀行が1億5千万ドル(約178億円)の損失が出たことを明らかにしていますが、多分他の大手銀行などでも、損失が次々出てくることになるでしょう。 それではまた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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