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カテゴリ:火山・地震情報の見方
先日の阿蘇山噴火で、たぶん煽り記事がまた阿蘇山に戻ってくると思っていたところ、こんな記事を見かけました(他にも、とても悩ましい記事も見つけましたが、今回はそちらはさておきます)。
阿蘇山噴火、これから何に警戒するべきか 4度もあった「巨大カルデラ噴火」の恐怖 東洋経済オンライン / 2016年10月19日 8時0分 http://news.infoseek.co.jp/topics/toyokeizai_20161019_140939/ 阿蘇山が10月8日午前1時46分に36年ぶりとなる爆発的噴火を起こし、1万メートルを超える噴煙を立ち上げた。幸い死傷者は出なかったが、場所によっては火山灰や噴石が1メートル以上も降り積もった。 この噴火は熊本地震と関係があるのか。今後、さらに大きな噴火が起こる可能性はあるのだろうか。 ■地表へ放出されたマグマはわずか 気象庁によると、今回の阿蘇山の噴火は地下のマグマの熱で地下水が沸騰した「マグマ水蒸気爆発」だという。噴き上げた噴石や火山灰の大部分は火口を塞いでいたもので、地表へ放出されたマグマはわずかであるようだ。しかし山体直下のマグマが活発化したことは確かであり、地震の影響で阿蘇山が活動的になり、近いうちに大噴火に至るのではないかと心配になるのは当然だろう。 地震が噴火を誘発した例はいくつか知られている。20世紀以降にマグニチュード9クラスの超巨大地震は6度発生しているが、そのうち5例では1年以内に震源近隣の火山が噴火している。唯一の例外はあの「3.11」である。ただこの場合でも、幸い噴火には至らなかったが、たとえば蔵王山、吾妻山、八甲田山などの東北地方の活火山では地震発生後にマグマ溜まりの異常が観測された。 地震が噴火を誘発するのは、超巨大地震の前後で地盤の状態が劇的に変化するからである。地震前にぎゅっと押し縮められていた地盤が、地震発生によるゆがみの解放で突如伸びた状態になるのだ。すると火山直下のマグマ溜まりも引き延ばされる。その結果マグマ溜まり内の圧力が下がり、ビールの栓を空けたときと同じようにアブクが発生して、マグマが地表へあふれ出すのだ。 熊本地震でも地震発生後に地盤が引き延ばされたことが確認されている。その結果地下数キロメートルにあると考えられる阿蘇山のマグマ溜まりは30~40センチメートルほど膨張したようだ。ただ、このマグマ溜まりの小規模な変化が今回の噴火につながったかどうかはよくわからない。 ただ私は、熊本地震と今回の噴火には直接の因果関係はないと思っている。そう考える最大の理由は、ここ数年阿蘇山の地下では活発なマグマの活動が観測されていたことである。 つまり、日本列島でも名だたるバリバリの活火山である阿蘇山は、最近、活動的な状態にあると言える。そしてこれは決して「異常」なことではなく、活火山の「息づかい」と認識したほうがいいだろう。 ■巨大カルデラ噴火の危険性を認識せよ 0月8日の阿蘇山噴火による噴出物は約50万トンと推定されている。戦後最悪の火山災害となった2014年の御嶽山噴火とほぼ同量である。しかしこれらは日本列島でこれまで起きてきた数々の噴火と比べると決して大きいものではない。日本史上最大規模の噴火は富士山宝永噴火や桜島大正噴火などであり、今回の阿蘇山噴火の数千~1万倍もの規模だ。 そしてこのクラスの大噴火は日本列島ではおおよそ100年に1度起きてきた。言い換えれば、列島に110ある活火山は、いつこのような大噴火を起こしてもおかしくないのだ。たとえば富士山で宝永クラスの噴火が起きたとすると、首都圏でも数センチメートルの降灰が予想され、経済的被害は最悪2兆円を超えると言われている。 しかしここで私たちが忘れてはならない事実がある。それは、拙書『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』でも強調したように、日本列島では富士山宝永噴火の100倍~数千倍の規模の噴火が幾度も起きてきたことである。地質学的なデータが比較的そろっている過去12万年間を見ると、北海道で4回、九州で6回、あわせて10回の「巨大カルデラ噴火」が起きている。最も直近のものは、7300年前、鹿児島県南方の「鬼界カルデラ」で起きた。そしてこの噴火のせいで南九州縄文人が絶滅したと言われている。そして阿蘇山も、過去30万年間に4度も巨大カルデラ噴火を起こしている札付きの火山である。もちろんその結果、あの雄大なカルデラ地形ができあがったのだ。 巨大カルデラ噴火は確かにまれな現象ではある。しかし忘れてならないことは、それが一度起こった場合の想像を絶する被害である。最悪の事態を想定するために、人口分布や偏西風の影響を考えて、九州中部でこの噴火が起きたとしよう。地層の中に残された過去の巨大カルデラ噴火の記録に基づくと、数十キロメートルにまで達した噴煙柱が崩壊して発生した500度を超える高温の火砕流は2時間ほどで九州のほぼ全域を覆い尽くす。 そして、首都圏では20センチメートル、北海道と沖縄を除く列島のほぼ全域に10センチメートル以上の火山灰が降り積もる。そしてこの降灰域では電気・ガス・水道・交通網などのすべてのライフラインが停止し、1億人以上が日常生活を失うことになる。おまけに現状では、この状況下での救援・復旧活動はほぼ不可能である。これは、「日本喪失」にほかならない。 自然災害や事故の対策を講じる際に参考にされるのが「危険値」という概念である。この値は、その災害による予想死亡者数に発生確率を乗じたものだ。確かに巨大カルデラ噴火の発生確率は小さい。今後100年で約1%程度である。しかしその危険値は、首都直下地震より高く、南海トラフ巨大地震とほぼ同程度である。 ■火山列島に暮らすということ 日本喪失が起きるのならば、それはそれで諦めて日々楽しく暮らそう、という見解もあるだろう。しかし私たちの子々孫々が末永く安泰であってほしいと感じる方も多いのではないだろうか。 私たちは火山から多くの恩恵を与えられてきた。温泉はわかりやすい例だし、拙書『和食はなぜ美味しい』でも論じたように、実は世界に誇る「和食」も火山からの贈り物である。火山活動のおかげで山国となった列島は、昆布や鰹の旨味成分を効果的に抽出する軟水に恵まれたのだ。 だから、ちゃっかりと恩恵だけを享受しているのはずるいように感じる。火山からの試練を十分に理解して覚悟することも、火山の民が取るべき道ではなかろうか。もちろん覚悟は諦念ではない。未曾有の災害に対する立ち振る舞いを考える必要があるだろう。 もちろん私たち科学者は、巨大カルデラ噴火の予測に向けて観測を開始している。まずは体の中を調べるCTスキャンと同じ原理で、マグマ溜まりの大きさと位置を正確にイメージングすることだ。簡単なように思われるかもしれないが、日本の火山でマグマ溜まりを正確にとらえた例はないのだ。火山大国、技術立国としては情けないかぎりである。
引用終わり。私が言いたいことは後半で書きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.10.20 23:07:09
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