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2017.06.12
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ひっくり返った姿
 
さて、深海魚や今回のような幻の魚と言われるメガマウスが捕まると、たいてい週刊誌や日刊紙で、「すわ、大地震の前兆!」と騒がれるのは、ほぼ毎年のことだったりします。
そしてまぁ、この手の記事が出て当たった試しがないというのも例年のことです。
確かに珍しいことですからね。でもそれはただの偶然です。
実際のメガマウスの捕獲事例と、地震の関連性についてみてみたいと思います。
 
 
>「実は、尾鷲の漁港では昨年4月16日に発生した熊本地震の前日、東日本大震災の約2カ月前にもこのサメが捕獲されています。それだけに、巨大地震との因果関係を疑う人がいるのです」(同)
  
熊本地震ですが、4月15日にメガマウスが捕獲されているのは事実です。しかし捕獲された場所は、三重県尾鷲市の事です。熊本から約400km離れたところで、もちろん、地震の原因となった布田川断層帯や日奈久断層帯とは無関係な場所です。
また東日本大震災前に捕獲されたメガマウスですが、2011年1月14日のことで、これも三重県尾鷲市での捕獲でした(これにはちょっと驚きました)
そして三重県尾鷲市と東日本大震災を引き起こした三陸沖は、約700km離れていて、まったく関連性はありません。
東日本大震災がおきる2ヶ月前に、遠く三重県で異常な何かが起きて、メガマウスが捕まった? 100歩譲って、三重県沖が震源地というなら、「一理あるかも」と、私も考える気になりますが、正直これでは、日本で捕まったと言うこと以外に共通項は見あたらないでしょう。
「可能性がある」と言えば聞こえが良いですが、震源地から遠く離れ、ましてや活断層にせよプレート境界にせよ全く変動が起きない三重県沖に、前兆現象が出るものなのか、その根拠は、憶測だけの話しと言っていいでしょう。
まさに古村孝志氏が仰るように、「仮に地震の前にサメが深海から上がってくるとしても、他の生物の増減や大型船の動きなど、地震以外の理由で沖合に来ることは十分考えられる。謎だらけの生物に頼るより、地殻変動などを測定する機器の精度をもっと上げて、地震の前兆を調べる方が効果的だと思います」という解釈と見解が、合理的かつ説得力のあるものだと、私は思うのですけどね。
 
 
>「確かに現在の地震学では、生物との関連性は立証されていませんが、サメやナマズは電気の感度が人間の10万倍以上もいいと言われています。サメの頭部にはロレンチーニ器官という小さな穴がたくさんあって、電気センサーの役割を果たしている。地殻変動で生じる電磁波などの信号を感じ、普段は現れない所に出没したと考えることもできます」
 
これは島村英紀氏の意見ですが、正直頭が痛いものです・・・。
サメやナマズが、人間よりも、電気などを感知する能力が高いのは仰るとおりだと思います。しかしだからといって、メガマウスが捕らえれた=大地震の前兆にはならないのですが、その辺を考慮せずにつなげて考えてしまうのは、軽率だと感じます。
だって、
メガマウスが捕まって、大地震も起きなかったときだって多々あるんですから(正確に言えば、そのケースの方が多い)。たまたま都合の良いケースだけを取り上げて、もっともらしく解説して見せているだけになってしまうでしょう。それは科学的な論説ではありません。
島村先生は先日もボコリ記事で取り上げましたが、「西之島の噴火活動が  富士山噴火を誘発するかも」と言った感じで、根拠や論拠を横に置いたまま全部並列につないで考えることがお好きなようですね・・・。
ひとつ先生の事実誤認を指摘致しますと、まず幻の魚と言われるメガマウスですが、日本での捕獲情報は世界的に見て高く、世界全体で120件で、その内日本での捕獲は20件余りと言われています(記事では、「捕獲数」ではなく、「発見例」と、微妙にニュアンスを変えているのはなぜなんでしょうね・・・)。確率的に言うと16.6%弱、6件中1件が日本での捕獲となっています。
さららに三重県での捕獲例は4件以上、三重県尾鷲市に絡んだ捕獲例は3件で日本ではダントツに捕獲されている場所なのです。従って、「普段は現れない所に出没」したわけではありません。メガマウスは日本では出現頻度の高い場所で、今回も捕獲されたと言う訳なのです。
 
 
>「房総沖は、北米プレートとフィリピン海プレートの境界上で、5、6年前から首都圏を直撃する地震が起きると警告する専門家もいる。フィリピン海プレートは1000キロ単位でつながっており、もう1匹が見つかった三重との関連性も否定できません」
 
私は20年以上前から、「首都圏を直撃する地震がもうすぐ起きる」と言う話を、定期的に耳にしています。
東京の下には無数の断層があると言われています。断層がある以上、いつの日か直下型地震は必ずやってきます。それは明日かもしれませんし、100年後かもしれません。
わざわざメガマウスと結びつける必要などひとつもないのです。
第一、熊本地震、東日本大震災の際につかまった際、三重沖はなーんにも起きていません(東日本大震災の時は揺れましたが、それは東日本大震災のエネルギーが強くて、日本中が強くて揺れただけです)。今回だけ「関連性が…」と思うのは、論者の結論ありきの意見でしかありません。
 
 
>「東日本大震災以降、プレートの歪(ひず)みのバランスが崩れた分、隣接するエリアで地震が起きやすくなっています。房総沖は、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、相模トラフの3つが重なる地球上でもここだけしかない非常に珍しい場所。地殻変動のエネルギーが溜り、地震が発生しやすいので、太平洋側から連続でメガマウスが出現したのを偶然とは思わず、大きな地震の前触れとして警戒すべきです」
 
この発言をした濱島良吉氏は、別件でよく覚えています。
この先生は、2013年3月発売の雑誌に、「2年以内に(つまり2015年3月までに)、富士山の噴火と首都直下型地震が同時に発生する」「その前に逃げるしかないんですよ。避難先を早く決めておくということです。 私はマレーシアに移住しましたから」と言い残して、大学をお辞めになって日本からいなくなってしまわれた方なんですね。
その期限が過ぎてから2年経ち、富士山噴火も東京直下型地震も起きていないわけですが、いまだしれって同様の発言を繰り返していらっしゃる訳です。前のことはひとつも触れずにね。まぁ、別に誰がどこに住もうか関心ありませんけどね。
前に、情報の裏取りをすることの重要さに触れたことがありますが(拙ブログ「デマに惑わされないために 後編」https://plaza.rakuten.co.jp/allmilitary72/diary/201610260001/ を参照頂ければ幸いです)、まさに、誰がどんな発言をしているかを調べることは重要なことであるなと改めて実感致しました。
ちなみに私は魚などに余り詳しくないので、勝手な意見ですが、メガマウスが太平洋側でしか今のところ捕獲されていない理由は、海流の影響なのかなと言う印象を持っています。もともと熱帯や温帯に生息する魚のようですしね。
 
このように見ていくと、メガマウスが捕まったからと、大地震の予兆なんていうる根拠はひとつもない、憶測だけなんだと分かります。
もちろん、明日南海トラフがとか、東京直下型がとかあり得ると思います。大地震にせよ大噴火にせよ起きる時には起きるものですから。
そのいつかの予測を、いちいちメガマウスのせいにされたら、それこそメガマウスの方が青ざめちゃいますよ。「冤罪だ!」って。

それにしても、週刊誌や日刊紙などの地学に対する見識は、相変わらず進歩がありませんね。
先月も、「福岡に大地震が起きる可能性がある」とぶちまけて、謝罪に追い込まれた週刊誌もあるというのに(正確に言えば、「某先生の見解を載せただけ」という責任転嫁でしたが)
あの人たちが変わらないなら、読み手が賢くなって、デマや煽りをはねのけて行かないといけませんね。
 
それではまた。





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Last updated  2017.06.13 15:09:32
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