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カテゴリ:歴史
ハヤカワ文庫HM
歴史ミステリーです。 怪我のため入院中のロンドン警視庁のグラント警部は、歴史上の人物の肖像画を見て、リチャード3世は本当に、残虐非道な悪人だったのか?という疑問を抱いた。そこで歴史書をひもとき、歴史研究生のアメリカの青年に資料を集めさせ、リチャード3世の素顔に挑む・・・・ この本は実は1951年に発表され、1953年に日本語訳されたものの改訳版だそうです。すでに50年たっているのですけれども、内容が薔薇戦争の頃の話なので、そういう意味では50年ぐらい影響ないかも(^^;) そもそも、日本ではリチャード3世といっても、学校の歴史でならうことはあまりなかったと思います。世界史で薔薇戦争が出てくるぐらいですよね。むしろ、シェークスピアの戯曲で有名なんじゃないでしょうか。 ただ、イギリスでは「リチャード3世」というのは、子ども向け絵本にもあるぐらいの悪人というのが定評みたいです。甥である2王子を殺して王位を奪い取った簒奪者というイメージかな。幸い、といっていいのか、そういう固定概念がないだけに、推理にさっと入っていける気がします。しかし、これって薔薇戦争などの基本的な歴史物語を知らないとわかりにくいかなとも思います。 この話を読んで、森川久美さんのマンガ、たしか「天の戴冠」というようなタイトルの短編だったと思うのですが、それを思い出しました。本人の意図にかかわらず、兄の死後、その王子たちを押しのけて王位につく羽目になり、望むと望まざるにかかわらず歴史に押し流されていく王。望まれて王になったにもかかわらず、兄の息子から王位を奪ったという罪の意識から逃れられず、かといって王としての職務を投げ出すこともできずに悩む姿。読んだのはかなり前なので、記憶もだいぶ薄れているのですけれども。(花とゆめコミックスの「青色廃園」に入っていたような気がするのですが、確認していません。) この本にもイギリス王家の、ヨーク家とランカスター家の系図がかかれているのですけれども、結局、リチャード3世で両家が争った薔薇戦争は終わり、イギリスの王位は、チューダー家にわたることになります。 中国の歴史書は王朝が変わってから、次の王朝で編集するということですけれども、そこでは前の王朝の最後の王というのは暴君とか悪者に決まってます。それだから滅ぼしたのだという新王朝の理屈ですよね。そういう意味では、チューダー家の時代に、リチャード3世悪人説がはびこったのもあたりまえなんだと思うとともに、事実ではなくても、後日の改ざんなどのために、そういうことが「常識」になってしまったということが、きっといろいろあるんだろうと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.09.18 00:17:19
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