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カテゴリ:歴史
新潮社
普段は買わない時代劇小説なんですが、つい帯につられて買ってしまいました。 「嫁入り目前に出奔?花嫁修業ならぬ隠密修行 小藩の合併に立ちはだかる正体不明の刺客、巨大な陰謀…。忍び猫のタマを従え、蜜姫は江戸をめざす。敵は暴れん坊将軍こと徳川吉宗?」 結構分厚い本なんですけれども、ドラマの暴れん坊将軍のノリで読めてしまいました。読んだあとにさわやかな感じでした。 時代は江戸時代、8代将軍吉宗のころ。九州豊後、温水(ぬくみず)藩2万5千石の乙梨(おとなし)家の姫君、蜜姫は、国元の側室の娘で、豊後の暴れ姫として有名なおてんば姫様。蜜姫と父親の藩主が遠乗り+温泉に出かけたときに、刺客が・・・姫の活躍で事なきをえるが、こんな小藩の藩主に何故刺客が? さらに父藩主は、姫に讃岐の風見藩(2万5千石)との縁組みをもってきた。共に2万5千石という小藩同士の婚姻で、お似合いではあるのだが、それだけではないと気づいた蜜姫は、父にその真意を尋ねます。 温水藩は貧乏藩、その経営改善のため、同じ小藩同士の合併を画策しているとのこと。 父、藩主が隠密に狙撃されたこともあり、蜜姫は、これは幕府の陰謀と将軍家を探り、ついでに風見藩主の人となりもさぐってこようと出奔します。母から付けられた、しのび猫をお供に・・・・ まず、この温水藩って実在するのかなと思い調べてみました。 もちろんそんな藩はありませんでした。しかし、豊後の国であること。姫が国を出奔し、別府湾を北東に行くと杵築藩に入ること、から杵築藩の南の「日出藩」(2万5千石)がモデルと思われます。しかし、この日出藩、位置からすると別府のあたりを含む地域ですが、「別府や由布院のように繁華な湯治場はありません」とあるので、まあ別府の近くにある小藩というところでしょうか。 ついでに、讃岐の風見藩も調べてみましたけど、高松藩、丸亀藩は別に名前がでてくるので違うのですが、藩主が金刀比羅宮にお参りする習慣から、少なくとも金刀比羅宮に隣接している藩・・・と思ったのですが、それって丸亀藩・・・。 やっぱりこの付近だけれども、ちょっと違う小藩みたいです。昨年、丸亀や金刀比羅宮に行ったのですけれども、ここの風見のお城が丸亀城のことだったらおもしろいのになと思いました。 それにしても、尾張徳川家の陰謀や、武田信玄の隠し金、吉宗の隠し子天一坊事件など、いろいろな騒動が起こります。 ただおもしろかったのは、これは地方新聞に連載した小説ということで、時代劇ではなく地方公共団体の財政問題や市町村合併などを思わせる内容が出てくること。 この2藩の合併騒動が、吉宗から、新しい藩の藩主はどちらかと聞かれたことによりもろくも崩れ去り、後で吉宗と老中がしてやったりとするところなど、最近の市町村合併で、最初は賛成しながらも、具体的に検討していく段階で合併推進協議会が解散していく状況を示しているようで、なかなかおもしろいことです。 合併話はつぶれたけれども、温水藩主の乙梨利重は、藩の財政再建のため、旅人を藩に招き入れることを考えはじめます。懐が豊かになった町人が金比羅参りや安芸の宮島に出かける。金比羅宮のある風見藩から温泉の多い温水藩への航路を開き、旅人を誘致しようと・・・ これって最近の観光客の誘致政策みたいですけど(^^;) 一方蜜姫は、江戸で一件落着した後、旅に味をしめて再度出奔。今度は日光へ向かいます。続編でないかな・・・ 【本日の気に入ったセリフ】 p391「上に立つ者が善だと判断したからといって、それを鵜呑みにして命ぜられるがままに行動してはいけない。正邪善悪の区別を決めるのは、自分自身でなければならないんだわ。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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