天翔ける鳥船

プリンセスコミックス（秋田書店）

「緋の谷」平教経の影武者の恋人の話
「望めの月」西行法師（佐藤義清）の友人の話
「真澄鏡」常磐（源義経の母）と義朝、清盛との話
「化ケ原」高倉天皇の愛人、小督と源仲国の話
「露分け」平重衡と式子内親王家の女房、中納言の君の話
「夢七夜」赤穂浪士の一人、矢頭右衛門七と商家の娘の話

この時代ロマンシリーズは、古典作品の中に出てくる登場人物たちの１シーンを見せてくれます。最後になって、ああ、この人の話だったんだ…と思うものが多く、伝えられたストーリーとは違うものもあるのですが、それはそれなりに、そうだったのだろうかと思うような結末だったりします。

赤穂浪士の話以外は、平安末期、平家物語の世界です。

「真澄鏡」は、ＮＨＫの大河ドラマの「義経」でやっている常磐と清盛の話です。源義朝との間に３人の子をなしながら、何故、敵の清盛の愛人になり子供も産んだのか。雑仕として働いていたころからの話です。よく考えてみると常磐は源義朝、平清盛に愛され、最後には一条家（藤原）に嫁ぎました。たいした身分ではないらしいので、そう考えると、すごい玉の輿です。

「化ケ原」は平家物語の「小督」のところですが、イメージがだいぶ違います。平家物語では、愛人を失って嘆く上皇に中宮が小督を紹介したことになっています。そうしたら、上皇は小督に夢中になります。小督の以前の恋人は、平清盛の婿（娘の夫）であり、上皇の中宮も清盛の娘であることから、２人の婿を小督に奪われたとしてたいそう立腹したため、小督が嵯峨野に身を隠し、それを仲国が上皇の命を受けて探しにいくことになったというものです。都に戻った小督は再び上皇の寵愛を得ますが、怒った清盛に無理矢理尼にされてしまいます。イメージとしては可憐な美女というよりも、清盛の横暴さが出ている話でした。こちらのマンガでは、清盛はほとんど登場せず、小督を利用して（中宮より先に男の皇子を出産することで）、平家の横暴を防ごうとする仲国たちと、秘かに仲国をしたっていた小督の淡い想いの話です。

【本日の言葉】
化ケ原（あだしがはら）
「…あなたに責められとうありません！
人の心を踏みつけにするなどと！」