お天気は晴天
生きることをやめたママ。
それなのに やってきた目覚め。
病院のベッドの上。
ママの手を握っているのは 子ども達、そしてパパさん。
子ども達の横には 目を真っ赤に腫らした ばぁば。
ママの頬を濡らしているのは パパさんの涙と鼻汁。
身体中が痛い。
点滴につながれた腕、心電図モニターの装着された胸。
たくさんの処置の痕。
あぁ また現実に戻ってきてしまった…。
どうして 目覚めてしまったのだろう。
パパさん:「希望を叶えてあげられなくて ごめん。」
本当だね。最期のわがままも 聞いてはくれないのね。
悲しいくらいに パパさんが好き。
だからこそ、もう パパさんと一緒に歩む人生は辛い。
でも パパさんと別々の人生を歩むことも考えられない。
ママが選んだのは 自分の時間を終わらせること。
パパさんと彼女の関係が発覚して以来、
ママがパパさんにお願いしてきたことは、
パパさんの手で ママの人生を終わらせること。
それができないなら 彼女を選ぶこと。
そうすれば ママは自分で命を終わらせられるから。
でもパパさんは ママのお願いを拒否し続けた。
彼女と3人で会ったあの時以来、パパさんは とても辛そうな顔をする。
そんなに辛いなら「ママと一緒に居たい」なんて 言わなければいいのに。
ママは自分で自分の時間を終わらせることに 決めた。
ママには 3月はやってこないはずだった。
ママがずっと強く希望してきたのは パパさんの腕の中で絶えること。
でも もうママは これ以上時間を重ねていくのは ただただ辛くて。
もう最期も独りでいい…そう思った。
それでも少しでもパパさんを感じたくて、
パパさんの部屋着を着て パパさん愛用のソファーに身をうずめた昨夜。
パパさんに メールを送った。
これで終わり。
そして 身体が動かなくなった。
意識が 真っ暗な闇の中に融けていった。
帰宅し ママを発見して 救急車を呼んだパパさん。
意識のないまま救急搬送されるママを 子ども達も見ていた。
パパさんの母上が駆けつけて、
子ども達と楽多さんは パパさんのご実家でお世話になることに。
救急隊から警察へも連絡が行き、
パパさんは 警察の事情聴取も受けたのだとか。
ママに施されたいろいろな処置。
通常なら苦痛を伴う処置の痕も 身体中に残ってる。
でもママは 痛覚にも殆ど反応しなかったらしい。
暗い闇の中で 独り。
意識を閉じていても 目覚めても 現実は現実。
パパさんと彼女が過ごしてきた時間は なくならない。
パパさん:「ママを発見した時、おいて行かれたと思った。
でも先にママをおいて行ったのは 僕だったんだね。
1人にしてごめんな。
もう1人にしないから。離さないから。
ママに拒否されても 傍にいる。手をつないでる。
辛いことも痛みも 全部 2人で半分こしていこう。」
どう答えればいいのか わからない。
自分を受け入れられない。
しばらく時間を過ごした後、王子1号が言った。
王子1号:「なんだ。ママ ねてただけか。
もう。パパ あわてんぼうなんだから。」
きっと 王子1号は 何が起こったのかすべて理解していて、
それを呑み込んだ上で そう言ってくれたんだね。
優しい子だね。
昨夜、パパさんのご実家で パパさんの兄上家族と過ごした子ども達。
王子1号は おねしょしてしまったのだとか。
ママは 大切な子ども達を傷つけた。
子ども達の存在も切り捨てて 独りで逝く事を選んだ。
一番見せてはいけない姿を 子ども達に見せた。
それなのに 子ども達は ママの手を握ってる。
これも現実…。
今日は 出勤予定の日だったのに、仕事にも 支障をきたしてしまった。
職場には 体調不良で入院したと報告してあるよう。
ママ 社会人として失格だね。
患者覚醒の連絡を受けて 医師が訪室。
生きていくことを放棄した者の命でも 目の前にある命は救う。
それが医療の現場。
退院希望を伝えたけれど、退院許可は出ない。
どうやら ママの身体の状態は あまり良くないらしい。
覚醒後も 続行される処置。
痛い。
涙が出るほど 痛い。
パパさん:「その痛みは 半分こしてあげられない。ごめんな。」
ついさっき、全ての痛みを半分こにするって言ったのに…。
やっぱり 嘘つきね。
入院用の荷物の中には 化粧水や乳液も入ってる。
これを準備したのは パパさんではないよね?
パパさんの姉上が 準備を手伝ってくださったのだとか。
あの 散らかり放題の我が家を見られてしまったのね
ママの意識がない間、ママの妹嬢や弟くんも来てくれていたよう。
大切な人達に 迷惑ばかりかけている。
じぃじがお迎えにきてくれて、ばぁばと子ども達は自宅へ。
自宅では 一足先に帰宅した楽多さんが待ってる。
今夜は ばぁばが泊りがけで保育当番してくれるらしい。
ばぁばは 昨夜は病室でママに付き添っていたらしいから 殆ど寝てないはず。
こんな娘でごめんね。
夜、隣のベッド(付添用)から パパさんの寝息が聞こえてくる。
パパさんも ずっと寝てなかったみたい。
ママも とても眠い。
姫が持ってきてくれたぬいぐるみを抱きしめてみる。
姫の大事な コロコロクリリンのぬいぐるみ。
寝る時もいつも一緒だったのに、
「ママにかしてあげる」と病室においていった。
早く 家に帰りたいな。
1年前の本日は;楽多さんは今日も破壊魔?(07年3月1日)