失踪Kさんとネコの話@アウトローな日系人達
表があれば裏もある@リトル東京 「Hi...Sorry,I always forget your name」 ショッピングモールで、馴染みのおじさんの顔を 見つけた。 名前を覚えられないのは、彼より2回りも若い私 の方だ。彼、ポールは、ニコニコしながら、私の 名前を言い当てる。 日系何世だろう?ポールの傍らには、以前、新聞で 見たことのあるもうひとりの日系老人の姿。 「あ、南米の日系人の補償問題をやってた・・・!」 思い出した。そうだ、この人。戦争中に南米からやっ てきた人達のための活動をしてる人だ。 彼らとしばし話をする。90%の英語の中に、時々 日本語が混じる。 「ところで、Kさん。この頃みないけど・・」 「He disappeared. Well...how long has been....?」 (彼は消えちゃったんだよ。どのくらいになるっけ?) 「一年くらいか?」 以前、金融の仕事をしていた時、紹介されてイースト LAのアパートに住む日系人のKさんという男性の所 に行った。 当事、彼は、永住権目当てで結婚しようとしている (彼&紹介してくれた知人の話)の日本人女性と暮ら していた。 その時だったか、その後、私がひとりで彼に会った時 だかに話してくれた話。 何かの事件があって、Kさんはひとりで2ヶ月間、全く 家から出ずにひきこもっていた。 ある時、ついに決心して自殺しようと準備を始める。 首吊り自殺だ。その時、ふと足元を見ると、 「ミャ~~~」 飼ってたネコが寄ってきた。 Kさんはネコを抱きしめて泣きくずれる。 「僕がいなくなったら、このネコ、誰が世話するんだ」 ・・・・・・ 「って話を聞いたことがあったんだけど・・」 「それって何年前のこと?」 「5-6年前かなあ?」 「そしたら、いつだ?何回目の時のだ?」 ポールが連れのおじさんに聞く。 「え?そんなに何度もそんなことしてるの?」 「うん、5回くらいかな」 そうなんだ・・・行方不明。失踪じゃん! この間、正直屋という古本屋で「完全失踪マニュアル」を 買って、何気に読んでいる。 こんなに身近に失踪のプロがいたとは。 いや、意外とね、日系人の中には多いかも。 白人社会へ溶け込もうと、自らを漂白していく表街道を歩 く日系人もいれば、ストロベリー畑を転々としていた独身 日系人達のそのままの泥臭さのまま、生き続けている人も いる。 どちらも日系人の姿だ。 思えば、この15年、いろんな日系人やこっちに住んでる 日本人と接してきた。 みんないろんな苦労してる。 私が最初の頃に出会った日系人の多くは、ある特徴を持って いる。 日本人の顔なのに、ゆっくりはっきりした英語で話す。 そこに、時々、時代遅れな日本語の単語が混じる。 こんな国で生活しているのに、あんまり上昇志向っぽくもなく、 英語で話しているのに、魂が今の日本の日本人より日本人っぽ い。 一緒に話しているだけで、ほんわかしてくる。 しばらくこのおじさん達と話していたら、それまでバリバリ だった肩の力が抜けた。ご利益、ご利益♪ Kさん、どこに行ったのかな? ネコ、もう飼ってないのかな? おーい、どこにいるんだー? Hey,I miss your silly jorks.