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2009.07.04
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カテゴリ:明治期・自然主義

  『あらくれ』徳田秋声(新潮文庫)

 少し前に、この作家の短編集を一つ読みました。その時の一作『新世帯』はなかなか面白かったという印象が残っているんですが…。

 話は少し横に逸れます。
 今、私の部屋に、筑摩書房『現代日本文学大系』全97巻という「無用の長物」があります。えー、月報によりますと、昭和43年8月第一回配本「芥川龍之介集」から始まって最終配本は、昭和48年9月となっています。
 繰り返しますが、97冊です。
 全く、狭い部屋をますます狭くさせる「無用の長物」であります。

 しかし真面目な話、この全集は近代日本文学史の評価として、間違いなくこの時期の「オーソリティ」でありました。
 そして実は、この全集での作家の取り上げられ方が、私がブログに報告する小説を選ぶ時の一つの基準になっています。
 
 じーっとこの全集の背表紙を見ていると、なかなか興味深いことに気づきますよ。
 全97冊中、2冊にわたって取り上げられている作家が5人います。誰だか見当がつきますか。
 この全集が、明治以降の日本の作家の中で、最も高く評価した作家です。それは、

  森鴎外・島崎藤村・夏目漱石・永井荷風・谷崎潤一郎

の5人です。このメンバーは、毎年オールスター戦に出場する押しも押されもしない各チームの4番かエースでありますね。僕も見ていて、まー、順当かなと思います。

 次に、1冊まるまるあてがわれている作家が、12人います。上述の芥川なんかがそうですね。このメンバー、何人くらい見当がつきますかね。ちょっと面白いでしょ。
 こういった面々です。

  幸田露伴・徳田秋声・正宗白鳥・柳田国男・武者小路実篤・志賀直哉・
  有島武郎・斎藤茂吉・佐藤春夫・芥川龍之介・川端康成・小林秀雄

 どうですか。どんな印象を持たれますか。

 柳田国男の入っているあたりが、編者の一つの「見識」でしょうかね。小説だけに偏せず広く「文学」を見渡すという。斉藤茂吉もそれに近いですかね。
 しかし後のメンバーを見渡した時(評論の小林秀雄は、評論とはいえ、他の小説家に全く見劣りはしていませんね)、失礼ながら、ちょっと「違和感」を感じる方が、お二人、いらっしゃると、まー、思いませんかぁ。

 柳田・斉藤・小林をとりあえず小説外ということで外した後、「違和感」が残るのはなんといっても、秋声・白鳥でしょう。だって、このお二人は、すぐに代表作も浮かばないですよねー。

 他の作家はどうでしょうね。
 露伴-『五重塔』、武者-『友情』、志賀-『暗夜行路』、有島-『或る女』、佐藤-『田園の憂鬱』、芥川-『羅生門』、川端-『雪国』、と、まぁ、適当に挙げてみましたが、こんなものでしょうか。
 それに比べると、秋声・白鳥両氏は「弱い」。特に白鳥。この人って、現在も読まれているとはちと思えません。
 (でも今回のテーマはこの人ではないので、この件については後日、大いに考えてみたいと思います。なぜ、正宗白鳥の評価は変わってしまったのか、を。)

 という佳境に入った(どこが?)ところで、以下、次回。
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Last updated  2009.07.04 06:58:37
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