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2009.07.05
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カテゴリ:明治期・自然主義

 さて、前回より取り上げていた作品はこれです。

  『あらくれ』徳田秋声(新潮文庫) 

 え、話題としましては、「筑摩書房『現代日本文学大系』全97巻」を取り上げていました。
 狭い我が家が、いやが上に狭くなっている一因の文学全集です。
 でもねー、背表紙を見ているだけでも、私としましては、結構面白いんですがねー。
 ともあれ、今回に至る詳細は、前回の報告をご覧ください。すみません。

 さて、徳田秋声と正宗白鳥との違いですが、多くのお方は、
 「そんなもん一緒やないかー。そもそもそんな人知らんわーい。」
とお思いかも知れません。そのお考えはほとんど正しいのですが、実は少し違っています。
 秋声は、岩波文庫に4冊も入っているんです。

 いくら「売れ筋」を見事に外すのを趣味としているような岩波文庫でも、4冊も入っている作家は、やや珍しい方です(ただし、そのうちの何冊が、今でも絶版になっていないかどうかは、少し不安です)。
 それに秋声は、新潮文庫にも一冊入っています。今回僕が読んだ文庫本です。きれいな「足袋」の絵の表紙です。

 そんな徳田秋声の『あらくれ』です。
 文学史的な評価はとても高い本です。「無思想・無解決」の自然主義小説の一つの到達点、とまで評価されています。

 ところが、さー、今回読んでいて、これが、おもしろくない本なんですねー。文庫本でわずか250ページほどしかないのに、やたらと進まない。なかなか終わりませんでした。

 なんでかなー、と読みながら考えてたんですね。
 一読、これは「エミール・ゾラ」だなと。ゾラについては、そんなに読んだことはないんですが、それでもフランスの自然主義の「本家本元」でありましょう。

 もしもそんな印象を感じさせるが故の、「自然主義小説の到達点」というのなら、それはそれで正しいのだとは思います。ただ、ゾラというには、書き込みが浅いんじゃないか、とも思いました。

 この話は、主人公の「お島」という女性が転々と男性遍歴をしながら生きていくという話ですが、一言で言って、「転々と」しすぎと思いましたね。もう少し、一つ一つの話について、せめてもうちょっと「面白く」感じるほどに書き込んで欲しいと思いました。

 ただ、その時々の描写はとてもくっきりと正確で、好ましい感じのものです。間違いなく現代日本語の先駆者の一人の筆だと思います。

 結局、ヨーロッパ大陸の白人とは、「体力」の違いでしょうかね。

 つまり、まとめますと、この小説は私にとって、「もっと長くても良いのにと感じるほどに短いし、もっと短い方が良いのにと思うほどに長すぎる」という、なんとも、困った感じの感想になってしまいました。

 うーん、なんか、しんどかったですねー。
 実は家に後、3冊、秋声の岩波文庫があります。うーん、困ったものです。

 というわけで今回はこんな所で。

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Last updated  2009.07.05 07:22:55
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