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カテゴリ:昭和期・後半女性
『親指Pの修業時代・上下』松浦理英子(河出文庫) 最初の単行本は1993年に出たそうです。話題になって、かなり売れたんじゃなかったでしょうかね。 僕もこの本自体は、かなり以前に買ってあって、でもずっと読んでなかった本であります。(そんな本がいっぱいあって、それでもだいぶ減ってきたんですが、まだあります。) 実はもっと「物語口調」というか、「寓話」あるいは「説話」なのかなと思っていたのですが、かなりリアリズムであります。 とはいえ、設定の核が、二十歳過ぎの女性の右足の親指がペニスになるというものですから(山田風太郎の忍法小説に、そんな忍者が、冗談みたいに出てきますがー)、この「設定の核」とリアリズムのすりあわせについては、うまくいっているのかどうか、大切な部分ではありますが、よくわかりません。 ただそれについては、ひたすら真面目な描写と、「長さ」とで押し切っているという感じが、とてもしました。 特に「長さ」で押し切っているというのは、長編小説の良いところというか、読んでいてその世界に「馴染んで」しまえることですね。また馴染ませる作者の描写については、文章・プロット共に、やはりなかなかの力量があるのだと思います。 ただ、「性」を前面に押し出す小説というものは、どうなんでしょうか、読みながら、僕自身かつてどんなのを読んだだろうか、そしてどんな感想を持っただろうかと思い出してみたのですが、なんというか、どれも実に「息苦しい」。 例えば谷崎の「卍」とか「鍵」とかを、僕は連想したのですが(そんな「大層」なんじゃなく、もっと近い時代の作品があるはずだと考えたんですが、「性」そのものが中心テーマといわれると、結構考えてしまうものですね。どなたかご教授いただけませんでしょうか)、どうも爽やかな読後感の「逸品」というものがありませんね。 なんかとっても疲れるんですね。真面目な「性」のテーマは。 (これは、はしなくもSM小説の読後感と同じですね。昔、橋本治が、身も心もどろどろになりたい時SM小説を読む、とどこかに書いていましたが、一緒ですね。そういえば、SM小説って、そんなつもりはなくても、ちょっと人間性の根元に触れている感じがしますものね。しませんか? 僕だけ?) えー、考えたのですが、性を追及するということは、やはり「人間」を追及することに他ならないとは思うわけです。だとすれば、小説家がそれを描こうと意欲するのは当然の帰結であろうなと。 これも昔(もうかなり昔ですが)、安部公房が「性」は二十世紀に残された唯一の文学的フロンティアだと書いていた文章を読みました。さもありなんと思います。 (しかし、二十一世紀になって久しい今も、「性」がらみの小説は結構多いですが、考えてみればこのテーマも、もうかなり「古い」わけですねー。そろそろ賞味期限が切れかかっているんじゃないでしょうかねー。) しかし「性」は、結局「エゴイズム」に近いところに位置している可能性がかなり高いんじゃないでしょうか。 だとすれば、それを描くことが、一種「息苦しさ」を感じるものになってしまうのも、やむを得ないのではないかとは思いますね。 うーん、この小説も、愚直なくらい「真面目」に書かれていると思うんですが、やはり息苦しかったですねー。 (それにこの小説には「性」に加えて「奇形」が大きく出てくるんですが、そのことも「息苦しさ」の一因かと愚考します。) そんな小説です。 女性作家には、時にこんな「真面目さ」が見られるような気がしますが、これも私の偏見でしょうか。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 /font> にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.05 06:05:04
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