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カテゴリ:昭和期・新興芸術派
『放浪記』林芙美子(新潮文庫) 『めし』林芙美子(新潮文庫) えー、全くの私事ではありますが、今回の記事をもって、この拙ブログの「第一期」を終えようと思っています。「第二期」は、週三回の更新を基本として綴っていこうかなと考えております。 今までに変わりませぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げますぅー。 まず『放浪記』の方から報告してみたいと思います。 もう去年の話になるんですかね、巷では小林多喜二の『蟹工船』がちょっとしたブームになりました。 しかし、『蟹工船』とはやけに正統的ですねー。プロレタリア文学の本道ですものねー。なんでそんな本が売れたんでしょうねー。 『蟹工船』に比べますと、『放浪記』のほうが、貧乏暮らしを扱って、遙かに「怪しげ」で、そしてその分きっと面白いです。 事実、過去にベストセラーになったそうですし、別にわざわざ過去の事を取り上げずとも、舞台では森光子さんが今も「ロングラン興行」をなさっています。 でも文字の上では、とても長いお話です。文庫本で460ページもあります。それに日記形式です。 そもそも日記形式の文章ってのは、いかがなものですか。 きっと苦手な人って、多いと思います。ストーリーの「起承転結」が、きっちりと読みにくいからですね。 でも「日記文学」は、日本古典文学の「十八番」でありますし(平安時代の女流日記ですね)、近代に入っても有名どころの作品があると思います(永井荷風のなんかがそうですかね)。 またきっと、芥川とか太宰とかはなんなりと書いている気がしますが、えー、この形式、実は私も例に漏れず、少し苦手なんですね。 ただ、この本の場合は出版事情のせいで、単純な「日記形式」にはなっていません。 こんな感じになっています。 この作品は3部に別れているんですが、1部がまずベストセラーになりまして、半年ほどして2部が出ました。ここまでが昭和の初期ですね。思わぬ本が売れたので急いで続編を出したという構図がとてもよくわかります。1、2部とも、日記形式です。 で、3部は昭和20年代に出されます。 僕が、この作品の中で比較的面白く読めたのが、この3部なんですね。 そして明らかにこの3部には、ナマの日記でない、小説家としての「虚構化」が読みとれます。そしてそれがなかなか面白い。 読ませようとして書いてあるからでしょうね。1.2部の「素」の日記のような部分(ここにも少なからず虚構化はありましょうが)は、まー、僕には、ちょっとタルい。 と、そういう訳であります。 でも、暇に任せて、ごろごろと横になって読む分には、1.2部もそれなりに面白いとは思いますが。 そして続いて、『めし』を読みました。 『放浪記』の、わりと面白いもののちょっと長すぎるという印象に比べて、この本はシンプルに短いです。文庫本で200ページちょっとです。 というか、これ、未完の絶筆なんですね。 つまり、僕は『放浪記』と『めし』とセットで、デビュー作と絶筆とを読んだわけです、たまたまですが。 林芙美子の死は、一種の突然死でした。 これは嵐山光三郎の本で読んだのですが、前日まで外に出歩いていて、翌朝になったら死んでいたのではなかったかと思います。 死ぬ間際の林芙美子は、仕事的にはわりと好調だったようで、沢山の作品を発表していました。確か三島由紀夫が、晩年の林について一定の評価をしていました。 今回のこの作品の感想についても、「手練れ」の作者によるものという印象がとても強いです。まるで太宰治の女性版のようです。 そう言えば内容も、太宰の絶筆の一つ『グッドバイ』と、なんとない相似があるような気がします。 『グッドバイ』は、今までつき合ってきた女性と次々に別れていくという話で、『めし』は、やはり女房が亭主を棄てようとするという話です。 読み終えまして、小説たるもの、作家たるもの、せめてこれくらいの「芸」は欲しいよなー、という気がとてもしましたね。 特に、今まで、半同人誌の作品みたいな「自然主義」とか「私小説」なんかを読んでいますと。 というわけで、そんな好感の持てたお話です。 ただし未完なので、ストーリーとしては纏まっていないところが、うーん、いかにも残念でありました。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 /font> にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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