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2009.10.29
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カテゴリ:昭和期・プロ文学

  『太陽のない街』徳永直(主婦の友社)

 「プロレタリア文学作家三羽ガラス」といえば、おそらく、小林多喜二・葉山嘉樹そして徳永直でありましょう。少なくとも、高校用日本文学史教科書副読本によるとそうです。

 例えば、中野重治とか、宮本百合子なんかは、その中に入らないんですね。
 中野は「転向文学」に入っているのかな。宮本はむしろ大戦後の「新日本文学会」の作家の一人として扱われていますね。(共に私の持っている文学史の教科書によります。)

 つまり、彼らは別の「流派」での評価の方が相対的に高い人々、ということですね。

 ところが、ちょっと調べるとすぐ分かるんですが、徳永直は、実は戦後も小説家として頑張っていたんですね。文学史教科書にも戦後の作品として『妻よねむれ』なんてのが取り上げられてあります(私は読んでいませんが)。

 「プロレタリア文学作家三羽ガラス」の後のお二人は、比較的早くお亡くなりになりましたものねー。
 小林多喜二は有名な殺され方、特高警察による拷問・虐殺であります。
 葉山嘉樹は、大戦終了寸前に大陸で野垂れ死に同様に亡くなりました。

 もちろん、亡くなられた方についてはその死を素朴に悼みますが、時代が過ぎ、その時代が「歴史」の中に入ってしまうと、時代のヤスリによる「歴史的評価」は、ある種残酷な側面を見せながら、その人々の上に、全く別な様相を呈しつつ覆いかぶさってきます。

 うーん、徳永直について、微妙な物言いの展開になってきましたねー。

 話題を、個々の作品に切り替えて考えてみます。
 個々の作品についてみましても、冒頭の作品は、「プロレタリア文学小説三羽ガラス」の一つと言っていいですね。

 小林多喜二『蟹工船』、葉山嘉樹『海に生くる人々』(場合によっては『セメント樽の中の手紙』)そして、『太陽のない街』ですね。
 ほかにもいろいろ作家がいて、あれこれ作品もあったでしょうに、この三作品だけに圧倒的に照明が当たっていますね。後の舞台は真っ暗な中。

 というわけで、「筋金入り」のプロレタリア文学作家の一人が徳永直であり、「筋金入り」のプロレタリア文学小説の一つが『太陽のない街』である、と。
 きわめて整合性の高い論理展開で行くと、こうなるんですね。
 うーん、実に理路整然としています。

 で、本作を読んでみました。
 で、ちょっと、困っています。

 以前、文学史上の忘れられかけている諸作品について、二つのグループに分けたことがありました。こんな感じでした。

 (1)時代を超えて現在でも、もっと広く読まれてしかるべき作品。
 (2)一定の歴史的価値は保ちつつも、現在となっては一般的読書には向かない作品。

 (前者の一例は、例えば尾崎紅葉の『多情多恨』とか。後者の一例は、うーん、挙げづらい……。)

 えー、かつてこんな風に考えたんですが、こうして改めて書いてみると、このグループ分けって、少し身も蓋もない感じがしますねー。

 本書の執筆当時、作者が想定した読者は、ごく一般的なプロレタリアートだったようです。
 作品展開に、なんて言いますか、「浪花節」のような、または「スパイ小説」の様なものが見えます。

 一方で、文章・描写が、全体的にやや粗雑な気がします。多くの登場人物が出てくるんですが、ちょっと描き分けられてない弱みが見えます。

 つまり、文学的な評価など二の次で、プロレタリアートの興味を引きつつ、精神を鼓舞し、理想に向かって学んでいくための小説、といったところでしょうか。

 発表当時は、波瀾万丈な展開の中にリアリティーがあって、よし頑張るぞ、という気にさせてくれる、よい小説だったんでしょうがねー。

 最後に、本作品の終わりに「附記」として、作者からの一言が書かれてあります。こんな文章です。

 散在せる旧争議団員、旧評議会二十万人の同志に詫びる! モデルが凡て現存者であるために、本名であったりなかったり、また事実が幾分相違したりしている。
 筆者が素人なために、充分に表し得ないが、第二部は更に努力をしてみるから勘弁して戴きたい。


 なんか、同人誌の後書きみたいですね。「詫びる!」とか「素人なために」とか「勘弁して戴きたい」というあたりに、いかにも誠実な筆者の素顔を垣間見るようです。


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Last updated  2009.10.29 06:11:19
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