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2014.02.10
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カテゴリ:昭和期・プロ文学

  『播州平野・風知草』宮本百合子(新潮文庫)

 実は私、冒頭の小説の一編のタイトルである播州平野の端っこに住んでいるもので、もちろんその理由だけではないですが(その他の理由としては、初めて読んだ宮本百合子の小説、彼女のデビュー作でもある『貧しき人々の群』が、面白くてとっても感心してしまったということがあります、だって、宮本百合子17歳の時の作品なんですから)、古書店で本書を見付けた時、思わず手にとってそのまま買ってしまいました。

 しかし買ってもすぐには読んでいなかったんですね。
 そんな本が我が家にいっぱいあったもので、何となくずるずると読まずにいました。
 一方で、まー、近代日本文学史関係の事柄が好きなので、何となくそんな知識も入ってくるんですが、宮本百合子と播州平野にはそんなに深いつながりはないんじゃないかと、ふと、何となく「不安」になってきまして、まー、もちろん「不安」という程のものでもありませんが、とにかくそれをテコにしてこの度、本書を読んでみました。

 ……うーん、やっぱり宮本百合子と播州平野はほとんどつながっていません、というより、本小説のタイトルの付け方はかなり特殊な感じがします。
 私は小説のタイトルの付け方について、どの本であったか失念してしまったのですが、かつて読んだことがあります。それによりますと、タイトルの付け方は3種類のパターンにおおよそまとまる、と。こんな感じですね。

   テーマ・象徴・主人公

 まー、考え方次第でありますが、なるほどこうまとめられますと、これはこれでうまく表しているという感じはします。大概の小説のタイトルは、この範疇内に収まりそうです。
 ところが、本作は違うんですねー。どれにも該当していません。

 さて本作の内容ですが、ほぼ私小説的な展開をしておりまして、治安維持法違反により網走刑務所で服役している夫を持つ筆者とおぼしき主人公の女性は、昭和20年の敗戦の日を迎えます。
 夫が釈放されることを期待するのですが、いかんせん、12年間も刑務所に入れられていた夫のことのみならず、本人も再三官憲によって非人間的な扱いを受けていた彼女は、未来に対する期待の仕方についてかなり「臆病」になっていて、「晴れやかさ」があまり見えません。と、いうのが冒頭から1/3くらいまでであります。

 中盤、主人公はいろんな経緯があって、山口県の夫の実家にいます。ここで主人公は、夫のことをあれこれ思い出していきますが、ここはなかなか暖かい感じでよろしい。
 そしていよいよ夫の釈放が決定的になり、彼女はかつて夫婦二人で住んでいた東京に向かって列車に乗り込みます。ところがこの列車が、大洪水があっていっこうに東京に向かって進んでいかないんですね。ここのところは、まるでカフカの『城』のようにとってもシュールで悪夢的な感じがします。
 そしてその大洪水の起こっている場所が、「播州平野」であります。

 ……うーん、これは、何なのでしょうねー。
 「播州平野」という単語が文中に出てくるのは、実に作品終了間際でありまして、このタイトルは「テーマ・象徴・主人公」のどれにも該当していません。(のように思います。)そんな不思議な小説であります。

 でも、冒頭から1/3の自然主義的文章はとっても地味ーで読んでいて退屈なんですが、中盤の「ラブラブ」展開はなかなか好感が持てて、さらに終盤のカフカばりの展開もそれなりに「ヘン」に面白いです。
 ひょっとしたら、本作はそんなシュールな効果をねらったものなんでしょうか、タイトルも含めて。……んー、まさか、とは思うんですがねー。

 さてもう一編の『風知草』という小説は、その続編です。『播州平野』の中盤の「ラブラブ」部分と直結しています。
 主人公である「ひろ子」は、無事に網走刑務所から釈放された夫「重吉」と共に暮らしています。

 格別、彼のために新調されたのでもない座布団の上にあぐらをくんで、うまがつて、はつたい粉をたべてゐる重吉を、ひろ子は、飽かず眺める、といふ字のままのこころもちで見まもつた。
 今夜に限らず重吉と一緒に食卓に向つてゐるとき、ひろ子の心にはいつも真新しい感動があつた。こんなに自然な男である重吉。簡単な、いもの煮たのさへ美味しがつて、友達と一緒に妻と一緒にたべることを愉快がる重吉。自然なままの人間に、こわらしい罪名をつけて、たつた四畳の室へ何しに十二年もの間、押しこんで暮させたのか。そこにどんなよりどころがあつたのか。権力だからそれが出来たといふならば、その不条理が不審でたまらないのであつた。


 と、こんな描写が結構出てくるんですが、ただこんなエピソードがいくつか集まった後に、微妙に二人の感情の掛け違ってくる様が、まるで刷毛で軽く擦ったように読めるような気もします。
 ……いえそれは、その後の宮本顕治と百合子のことを、事実として我々が何となく知っているからかもしれないのでありますが……。


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Last updated  2014.02.10 20:38:46
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analog純文@ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩@ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
analog純文@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03)  おや、今猿人さん、ご無沙汰しています…
今猿人@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03) この件は、私よく覚えておりますよ。何故…

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