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2009.11.19
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カテゴリ:昭和期・新戯作派

  『津軽』太宰治(新潮文庫)

 さて、上記小説報告の後編であります。
 前回は、ほとんど本文の引用で終わっていましたが、読んでいて気持ちのいい文章というのは、書き写していても、やはりとても気持ちのいいものですね。

 書き写しながら、思い出していたんですが、そういえば太宰の文はこんな文だったな、と。
 というのは、かつて昔(多分大学時代)、まー、今考えると「ヒマに任せて」、何人かの小説家の文章の一部を書き写していた事がありました。三島とか漱石とか、谷崎とか、そして、太宰とか。

 太宰の文は、センテンスがとても短いんですね。読点も多いです。『走れメロス』なんて、そんな典型的な文でした。(中期の谷崎の文章と、何と違う事!)

 それとあと、思いの外、平仮名が多い事です。漢字で書いたっていいんじゃないのと思うような部分が、平仮名で書いてあります。あの狙いは、今でもよく分からないですね。

 さて、冒頭の作品報告に戻ります。
 『津軽』は古来、名作の誉れ高い作品で、少なくない読者が、太宰作品の最高峰と押しているものです。
 ところが、僕にはその理由がよく分からなかったんですね。

 で、今回、再読しまして、いい作品だなとは思いましたが、しかしこれがなぜ太宰作品のベスト1なのか、やはりよく分かりませんでした。

 僕が考える太宰作品のベストは、えー、改めてこういうのを考えてみると、迷うものですね。
 えーっと、『お伽草子』です、かね。

 もちろんこの作品も評価が高いですね。太宰作品の一等賞にあげていた評論家もいたように思います。
 この連作短篇の中でも、「浦島さん」は、太宰作品中の、僕の偏愛の対象であります。
 この作品の中には、小説によって描かれた、最も美しい想像力の極北があると、僕は思っています。

 そう、「想像力」なんですね。
 何がって、太宰の小説の魅力の一番か二番目にランクされるものについてです。
 ところが、振り返って、この『津軽』における想像力の「立場」はどうなっているのでありましょうか。

 それが良くない事だとは思いませんが、この作品中の描写は、基本的に全て事実なんでしょうか。
 前回の報告において取り上げました『津軽』の末尾に、「私は虚飾を行わなかった。読者をだましはしなかった。」とありました。
 しかし、太宰の魅力の少なからぬ部分は、実は「読者を騙す力」ではないでしょうか。(ただし、この末尾のような一文を入れるところもまた、太宰の大きな魅力はありますよね、確かに。)

 そういえば、これも前回の僕の報告の始めの方に、この作品をこのように紹介しました。

 「いわば、この作品は、ノンフィクションの、旅行記であります。」

 うーん、この作品は、小説じゃなかったんですねー。えええーー?

 じゃ、この作品が太宰作品のベスト1だと主張する方々は、小説家としての太宰作品は買わないって事ですか? 

 それって、例えば漱石の作品の中で、最も優れているのは『硝子戸の中』ですって言っているのと同じですか? (確かに『硝子戸の中』も、漱石作品中高評価の随筆ではありますが。)

 或いは、漱石の作品の中で最も優れているのは『近代日本の開花』という講演です、っていう類?

 やはり変ですよね。

 例えばこの『津軽』中、もっと僕が面白いと思った個所の一つに、作者を迎えてくれた「蟹田のSさん」の熱狂的な饗応ぶりの場面がありますが、ここは「極端な誇張」つまり、ほぼフィクションでしょう。

 こんな個所を描く太宰の筆には、『お伽草子』に直接繋がるような縦横無尽な「冴え」が感じられます。
 この太宰の、一番の「得意技」を、あえてほとんど「封じて」描いた「佳作」が、『津軽』なのではないでしょうか。

 この作品(小説に非ず)は、読後、ほんのりと心の温まるような、実によい旅行記であります。
 しかし、太宰の小説には、これ以上の、太宰の「専門科目」の「愛」が、とても素晴らしい面白さを伴って描かれています。
 太宰が、歴史を越えて読み継がれる「真骨頂」であります。


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Last updated  2009.11.19 06:16:33
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