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カテゴリ:明治期・自然主義
『家・上下』島崎藤村(新潮文庫) 島崎藤村は明治三十九年に『破戒』を世に問い、一躍新時代の小説家として、中央文壇に名乗りを上げます。 多くの文学者が、『破戒』を絶賛しますが(漱石も手紙に、紅葉は後世に残らないかも知れないが『破戒』は残ると、やはり絶賛に近い評価をしています。)、翌年、田山花袋が満を持して『蒲団』を発表すると、世間の「新時代の小説」の評価は、『破戒』から潮が引くように離れていきます。 就中不可解なのは、藤村自身があっさり『蒲団』の前に白旗を掲げ、以降、その後塵を拝するような作品を発表し続けたことですね。 さて、その一連の作品の一つが、今回取り上げました『家』であります。 しかし、私、ふと気が付いたんですが、藤村自身の半生をモデルに描いた本シリーズは、発表順が微妙に時間軸順になってないんですね。 こんな具合です。 (1)作品内容の時間順序・『桜の実の熟する時』→『春』→『家』→『新生』 (2)作品の発表順序・『春』→『家』→『桜の実の熟する時』→『新生』 最後の『新生』が、他作品の発表時と平行するように起こった事柄をモデルにしているため最後に来るのは分かるとしても、『桜の実~』がなぜ、三番目に来たんでしょうね。 たまたまかも知れませんが、ひょっとしたら、ここに藤村の苦悩が見えるのかも知れません。 それは一言で言えば、藤村の、小説家としての想像力不足であります。 花袋の『蒲団』にあっさり白旗を揚げたのも、或いはそのせいでしょうか。 何しろ百戦錬磨の藤村です。一端本格小説的系譜の『破戒』を発表したものの、この方向に突き進むには、基本的に自らの資質が合っていないことを、素早く察知したのかも知れません。 さて、何を言おうとしているかというと、ちょっと大風呂敷を広げておいて、ヒジョーに情けない話なんですがー。 それは少し前に、『桜の実の熟する時』を読んだ時にも、私、感じたことです。 もちろん「巨匠藤村」ですから、決して酷いというわけではありませんが、何というかー、「相変わらずおもしろくないなー」という感想であります。(えー、っと、すみません。) 作品内に流れる時間軸順では、自身のモデル作品の第一作目となる青春前期を描いたものですが、いかにも自然主義的「おもしろくなさ」が、そのままであります。 (ただ後半は、少し面白かったです。親や周りの期待を裏切って文学を目指し始めるところですね。) そして、本作『家』であります。 ちょっと前に、『夜明け前』を読破致しまして、その時のことを忘れていたのですが、読みながら思い出しました。 「せやせや、この作家の本、おもしろくなくってしんどかってんや」と。 『家』は、『夜明け前』よりさらにおもしろくなくってシンドイです。 その理由は、完璧に一族郎党・身内小説になっているからです。 ちょっと、話題を変えてみます。(毎度のことで、すみませんねー。) そもそも極めて日本的な「私小説」ですが、この系譜は、細々ながら現在でも生きているんですね。ただ現在の私小説は、なぜか「攻撃的」な感じのものが多いですねー。 (例えば、藤枝静男、車谷町吉など。) それはなぜかと考えると、この21世紀の今の時代に、臆面もなく我が事のみを書き綴っていくことに、作者はきっと恥ずかしさを感じるんですね。で、そこから「逆ギレ」する、と。 そう考えますと、まー、異なる時代とはいいながら、藤村は、よくもまー、自分の一族のことばっかり、臆面もなくこれだけ書けるものだなと、少々感心はしないでもなかったです。 でもなんというか、こういう「世間話=ゴシップ」小説って、読み終えると変に「クセ」になりそうなところもありますね。 その「クセ」になるのを逆手にとって、最後に大物を一発モノにしたのが、島崎家のルーツをどーんと遡った『夜明け前』ではなかったか、と。 うーん、なるほど流石に「巨匠・藤村」、「悪賢い」ですなー。(すんません。) 実は私、このシリーズ本、みんな持っているんですね。 ということで、これから頑張って読破してみたいと思っております。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 /font> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.12.26 07:35:23
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