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カテゴリ:昭和期・新戯作派
『肝臓先生』坂口安吾(角川文庫) 上記短編小説の読書報告の後半であります。 前回の最後に到達したテーマは、かなり過激なテーマでありました。 いわく、 「坂口安吾の小説は面白くない」 えー、実際の所、本当はこんな事を書いていいのかなという気持ちはある事はあるんですね。自らの「阿呆」をこれ以上宣伝してどうするんだ、という思いもあることはあるんですね。 しかし僕は、こんな事実も覚えているんですね。 かつて、正確なタイトルは忘れてしまいましたが、『坂口安吾の随筆・評論全集』といった、確か十冊近い全集があった、と。 このことは、僕一人だけではなくて、少なくともこんな全集を出せば売れるんじゃないかと出版人が思うくらいに、安吾は随筆・評論が面白いという「共通理解」があったということ、でしょう(?)。 さて、ということで、多くの方に賛同をいただいた(おーい、いつどこで?)ところで、若かった頃の僕の話に戻させていただきます。 実はあの頃も、つまり高校時代も、安吾の随筆のたぐいについては、圧倒的な共感を持ちながらも、こと小説については、僕はもう一つピンと来ていなかったんですね。 でもそのころの「ふにゃふにゃのナイフ」(すみません。この表現は前回の拙ブログの表現を受けています)を持っていた少年は、そういうことを友人に言ったり、それ以前にそんなことを自らの意識の上に乗せることを、とても恥ずかしいと感じていたんですね。 ところがあれから幾星霜、すでに「錆びたナイフ」に狎れきってしまった元少年は、この度あっさりと思いました。 「そや、安吾の小説は、おもんなかったんや」 えー、どうでしょうか。僕は間違っているんでしょうか。 そもそも偏見に満ちたわたくしではありますが、自らの素朴な印象を大切にしながら、今回も書いております。どうですか、安吾の小説は、そのおもしろさにおいては、同時代の太宰治や織田作之助の比ではないでしょう。 これも、確か安吾の随筆のどこかで読んだことだと記憶します。(細かな言い回しは全く異なっていますが。) 三好達治が、安吾を評して、「とても大きな伽藍である。しかし中に入ってみたら、まさにがらんどうである。」と。 それを読んだ安吾も思わず笑ってしまったと書いてあったように記憶しています。 さて、随筆においてあれだけ面白い安吾が、なぜ小説については、格段におもしろさのレベルが下がるのか、そんなことを少しだけまとめてみたいと思います。 まず考えたのは、安吾の随筆等におけるおもしろさの分析であります。僕はこのように考えてみました。 (1)常識に全くとらわれないユニークな発想。(シュールなほどの合理主義) (2)詩情溢れる感性的な表現。 (2)細部に拘らないスケールの大きな分析力。 こんなあたりでしょうか。 これがなぜ、小説には生きてこないのか。 例えば安吾の小説のタイトルはなかなか魅力的なものが多いですね。今回の短編集にある作品でも「私は海をだきしめていたい」なんて、すごくおしゃれですよね。 設定も悪くないです。「ジロリの女」の、人間には人の顔をジロリと見る者とそうじゃない者と二種類があるなんて発想並びに設定はなかなかのものです。 しかしそういった趣向が(特に少し長い小説になってくると)、読んでいく内に飽きてくるんですね。 なぜ飽きるのか。うーん、実はこの先の分析については少し自信がないんですが、取り敢えず僕はこう考えました。 構成力と、読者の頭の中に像を結ばせるような描写力の不足。 うーん、どうでしょう。ちょっとこの書き方は多くの反対意見が出そうだなと、僕も思います。言いっぱなしてしまうのは良くないなとも思います。 ただ最後に、この感じ方なら多くの人にも、まー、これなら分からないでもないと言っていただけるかなと思う言い換えをしてみますね。 一単語で言う坂口安吾の小説の印象です。いわく、 「わがまま」 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 /font> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.03.20 08:34:44
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