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カテゴリ:昭和期・後半女性
『刺繍する少女』小川洋子(角川文庫) 先日、久しぶりに古い友人に会いました。 かつて同じ職場に勤めていた同僚で、その後彼は転職し、今は教科書会社に勤めていると言います。 やー、君が望んでいた出版関係じゃないかというと、何言ってんだい営業だよ、と言われました。 いろんな話をしたのですが、ところで高校の国語の教科書にはまだ『舞姫』は載っているのと、以前から聞きたかったことを尋ねました。 彼がそうだと答えたので、『舞姫』はまだ高校生に通用するのかと、さらに尋ねました。 少し前から思っていたことなんですが、『舞姫』とか藤村の『破戒』とかは、すでに歴史的な役割は終えているんじゃないかと僕は感じていたんですね。 歴史的役割どころか、「『石炭を、ばはや、積み果てつ。』先生、『ばはや』って何ですかー?」って生徒は聞くらしい。 『舞姫』はダメ。鴎外の擬古文どころか、志賀直哉の『城の崎にて』さえ不評だと彼は言います。 なぜ『城の崎にて』が不評なのかと聞くと、ねずみが出て来るだろうと彼が答えたので、場面を思い出して、あぁなるほどねぇ、竹串で刺される場面。……動物虐待か、と言いました。 そして、『舞姫』がダメで『城の崎にて』がダメで、じゃあどんな小説が入っているのと聞いた時、彼の挙げた名前の一人が、小川洋子でありました。 小川洋子? 何で小川洋子なんだと、少し、違和感を持ちました。 でもすぐに、ははん、『博士の愛した数式』のせいだなと気が付きました。 僕は、ちょっと違うだろうになぁと思いつつ、しかし『博士の…』以降の作品を僕は読んでいないので、あるいはそうなのかなとも思いつつ、そんなこんなが頭のどこかに残っていたので、先日つい大型古書店で冒頭の本を手にし、そして読みました。 さて、今回読書報告する文庫本は、十個の短編の入った小説集です。この筆者の作品の中では、初期の作品集だと思います。 三つくらいのお話しを読んだとき、ちょっと物語が痩せた感じだなと思いました。もちろん短編であるということもあるでしょうが、作品世界に拡がりが感じられないように思いました。 主旋律にもう一品、という感じ。 例えば『キリンの解剖』という作品があるんですがここに描かれているのは、フェティシズムでしょうか。それにもう一品が「妊娠中絶手術」。 もしこの小説から「妊娠中絶手術」を取ってしまったらどうなるだろうかと、読後思ったのですが、そもそもそんな風に感じてしまうことが、一種作品の「痩せた感じ」を現していると思いました。 ただ、この「もう一品」が、なるほどいかにも小川洋子的なんですよねー。 『博士の…』がベストセラーになりまして、映画化までされまして、なんか「癒し」系の小説家と思われがちなのかどうか、実は僕はその辺はよく知らないんですが、とにかくこの小説家は本来、なにかカチンと硬く冷たい芯のような「もう一品」を持つ小説を書いていた人でありました。 今回の短編集に描かれている「もう一品」を挙げてみますと、 寄生虫・狂女・キリンの脳の解剖・窒息死した飼い犬・DV・ぜんそく発作 などです。 こうして挙げてみて、ふと、いかにも女性作家らしい女性作家という気がしたんですが、これは別に女性差別でも何でもないですよね。 上記に並べた「パーツ」は、この筆者独特の優雅さと冷たさを持った描写と共に、イメージの奔流のように描かれます。 なるほど、この作家が海外で読まれている、フランスで何か賞を受賞したというのは、よく分かりますよね。 残酷と優雅と来れば、まさにフランス文化そのものではないですか。 ……次回に続きます。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 /font> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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