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カテゴリ:明治期・浪漫主義
『對髑髏・艶魔傳』幸田露伴(岩波文庫) 元々あまり漢字を知らない上に、もう四半世紀近くもワープロばかりでほとんど手書きをせず、それに近年は逃れられない加齢の難渋が加わり、漢字が書けも読めもできなくなりつつあります。(困ったことですなー。) そんな僕が、なんだって、どう読んでいいのかも分からないようなタイトルの小説を取り上げたのかといいますと、先日久しぶりに都会の古書店に行ったんですね。 そこはちょっとした古書店街で、十軒ほどの「古本屋さん」(懐かしい言い方)が並んでいます。 久しぶりに行きますと、僕なりの「獲物」がやはり、ちらほらあります。 僕の「獲物」とは、稀覯本なんかでは全くなく、基本的には本ブログで取り上げている本、つまり明治から昭和の日本文学(小説)の文庫本であります。 だから、たとえそれが初版本であっても(初版本に対する興味は僕には全くありません)、絶版本であっても(少なくない「獲物」が現在絶版本です)、値段的には、まー、知れているんですね。 それどころか、僕の求めるそんな文庫本は、基本的に売れ筋であるはずもなく(少なくない「獲物」が現在絶版本・リフレイン)、流行の大量流通古書店に準じてか、店前の通路に出してあるカートなんかに入って、一冊百円(場合によっては二冊・三冊で百円)で売っていたりします。 今回報告の岩波文庫も百円で見つけました。 ちなみに、昭和二十八年第一刷、「★」一つの岩波文庫で、このころの「★」印は、一つ四十円だそうです。そしてこれも現在絶版本です。 さて筆者の幸田露伴ですが、僕の持っている高校用の日本文学史教科書には、尾崎紅葉と並べて書かれてあります。 どういうペアかというと、「男性的な作品の露伴・女性的な作品の紅葉」というセットですね。 男性的な価値観とか生き方を、男性的な文章で力強く描く露伴という見解であります。確かに、以前本ブログで報告した『五重塔』もそんな感じの小説でありました。 ところが本書は、これが、珍なるかな、全然違うんですねー。たとえばこんなくだり。 第三十五は小便とて、是は昔時町家の娘などの小面の剥げたるを作り立させ、御大名の目に止るやう仕掛、支度金沢山取りて御妾奉公致させ、殿様添寝の暁寝小便したたかすれば、何ほど色好みの大名も驚きて御下となるなれど、さりとて支度金返せと云ひ玉ふ事もなく、又其悪き風評をさるるをも恥玉へば何の仔細なく其まま別離るるなり。当時売買の其まま流れとなるを小便といふも是より出たる事にて、是れ男に我身を罪の無き悪き者に思はせて直に退く企み、一番の酷らしき手、相對密夫筒もたせと変らざる悪事に候へど、まさかに当世小便は拙し。(『艶魔傳』) まるで、フランス文学の艶笑コントのようですよね。 この短編集には三つの話が入っています。そのうちの二つは、鏡花の『高野聖』のような話、つまり思わぬ山中や寒村に美女が現れるという話です。そして、その美女が自らの「愛欲」の半生を語るんですね。 こういう一種の「額縁」付きの小説は、この時代の流行だったんでしょうかね。国木田独歩なんかもこんな感じの小説を書いています。(遡っていけば、モーパッサンあたりに行き着くのかも知れませんね。) そしてその二つの「色っぽい」小説に加えて、残り一つの短篇が、上記に引用した『艶魔傳』で、これは書簡体(仏文得意(?)の、例えばラクロの『危険な関係』の書簡体!)で、男を手玉に取る方法を伝授するという内容です(まさにラクロですね)。 上記引用部冒頭に「第三十五」と書いてあるのは、「色道裏の第一」から始まる、男を誑かすことから始まって、都合良く捨ててしまうに至る、様々なテクニックの紹介順であります。(「恋愛テクニック」の35個目ですよ。どうです、とっても面白そうでしょ。) 考えれば、露伴は小説家であると共に、考証家でもありました。露伴の多方面にわたる博引旁証ぶりは、実に恐るべきものであったと聞きます。 露伴とフランスの「好色文学」とは、およそ関わりがなさそうに思いますが、蘊蓄家の筆者のことですから、あっち方面の知識も、実は極めてマニアックにいろいろとご存じであったということは、充分に考えられますよねー。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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