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カテゴリ:昭和期・新戯作派
『富嶽百景・走れメロス』太宰治(岩波文庫) この拙ブログでもフェイヴァレットを表明し、いくつかの作品も部分的には再三取りあげてきて、「すごいなすごいな」と言い続けてきた太宰治ですが、一冊の読書として取りあげるのは久しぶりになります。 しかも読んだ切っ掛けは、ブックオフで上記岩波文庫が105円で売っていたからとあっては、太宰治先生に対して申し訳が立たない、…とは、もちろん思いません。 フェイヴァレットとは、そんなケースも含めて、あらゆる読書機会を満足させる本のことであります。 本書には10編の短編小説が収録されています。 作品選定のコンセプトは取り敢えず「戦前」のものというのが前提で、そこから先は誰の手によるものでしょうか。 本書の解説は、井伏鱒二が書いており、そこに「ここには、その意図をうかがうに足る代表的な短編のうち、戦前のもの十編を取りあげてみた。」とありますから、それを素直に受け取って井伏氏による選定としておきましょうか。こんな十編です。 『魚服記』 『ロマネスク』 『満願』 『富嶽百景』 『女生徒』 『八十八夜』 『駆け込み訴え』 『走れメロス』 『きりぎりす』 『東京八景』 この収録順は作品の発表順であるのですが、こうして並べて見ると、うーん、いずれ劣らぬ珠玉の名品ばかりでありますねー。 今回改めて読み直してみて、私がよかったと感じた順に並べてみますね。ただしこれは今回の読書だけによる、かつ私の完璧な独断でありますから、この順位については苦情のコメントなど送らないでくださいね。よろしくー。 1・ロマネスク 2・走れメロス 3・きりぎりす 4・魚服記 5・駆け込み訴え 6・富嶽百景 7・満願 8・八十八夜 9・女生徒 10・東京八景 うーん、後半はかなりつらいですが、こんなところでしょうかねー。 『ロマネスク』はもちろん名品ですが、今回は、特に高笑しながら読んでしまいました。 『走れメロス』は読みつつ何度か目頭が熱くなりました。加齢のせいで、小説などだけではなく何でも「一生懸命」なもの(やはり子供とか、ペットなんかが中心でしょうか)を見ていると、もう涙腺が緩んで仕方がありません。困ったものであります。 『きりぎりす』これも、泣きますねー。主人公の画家の出世していく様が、何となく太宰の作品には珍しい気がして面白かったです。しかし、ところ構わず泣いてしまう困った名作ですなー。 『魚服記』今回、一番気合いを入れて読みました。以下に書きます。 『駆け込み訴え』以前より「完璧なる名作」と思ってきましたが、今回は「さほどまでにはあらず」とは思いつつ、素晴らしさはやはり傑出しています。 『富嶽百景』これは、「あいかわらず、よい。」と思える作品ですね。 『満願』これも、極上の一品の様に思いますが、今回読んでみて、お話自体はほぼ完璧にフィクションだろうなと思いました。ひょっとしたらそれに近い体験があったのじゃないかと感じさせるのは、むしろ『黄金風景』かなと思います。 残りの三作についても、もちろん甲乙付けがたく素晴らしいのですが、「今回の印象」と言うことだけに限って、かつ、無理やり順位を付けるとこの様になってしまいました。 競争競争と言われる事の多い最近の社会風潮ですが、順位を付けるということは、結果的に本意を見失うことが確かにありますよねー。 さて、上記にも触れましたが、今回の短篇集の中で、私が最も「気合い」を入れて読んだ作品が(「気合いを入れて」といっても、もちろんたいしたことはありません。取り敢えず問題意識を持って、読み返したりちょこちょことメモしたりしただけです)、『魚服記』です。 どんな「問題意識」を持ったかと言えば、たぶん以前より多くの人によって分析されている、本作における「児童虐待」についてのことです。 それについて、一体それは作品中のいつから起こっていたのか、を考えつつ(というか、本当は読んでいるうちにふと思っただけですがー)取り組んでみました。 詳細は次回に続きます。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.12.15 06:24:00
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