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カテゴリ:明治期・浪漫主義
『連環記』幸田露伴(岩波文庫) 本文庫の解説を川村二郎氏が書いています。こんな書き出しです。 「『連環記』は幸田露伴の最後の小説である。そして同時に、彼の文学が到り着いた最高の頂である。」 なるほど。もうこれで、一定のことは語っているような気がしますね。 昭和16年、露伴75歳の作品です。しかし露伴はさらに数年存命し、昭和22年、81歳で大往生を遂げます。 露伴の臨終の様子を描いた娘・幸田文の文章はとても印象的でした。『終焉』という追悼記にこう書いています。 ゆうべから私に父の一部は移され、整えられてあったように思う。うそでなく、よしという心はすでにもっていた。手の平と一緒にうなずいて、じゃあおれはもう死んじゃうよ、と、何の表情もない、穏やかな目であった。私にも特別な感動も無かった。別れだと知った。はい、と一ト言。別れすらが終わったのであった。 大博識の小説家兼考証家の最後の小説、ということですが、天衣無縫、縦横無尽、きりりと引き締まって格調高く天翔ける文体、その一方でふいと、地上に降りてきたようなユーモアもあって、なんとも、さすがに素晴らしいものだと思います。 しかし、しかしね、あのー、ちょっと難しいお話ですね、私のような無学者には。 いえ、この言い方は少し正しくないですね。 さほど難しくはないですが、作品の素晴らしさを十分に味わいきるだけの資質と教養が残念ながら当方に欠ける、といった方が正確でありましょう。 お話は、平安朝の文人・慶滋保胤の話に始まり、増賀上人から大江定基の話に移り、そしてさらには恵心僧都やその他私のよく知らない出家・往生者の話へと、次々とつながっていきます。 タイトルは、そうしたつながりを表しているんですね。 大江定基の話に絡んで、彼の従兄弟であった大江匡衡とその妻・赤染右衛門の話が書かれてありました。 このあたりは、上記の私の表現で言いますと「地上に降りてきたようなユーモア」の漂う部分で、そもそも男と女の惚れた晴れたのエピソードの部分ですから、とても面白かったりします。 ついでに赤染右衛門といえば、百人一首に入っている歌はこれですね。 やすらはで寝なましものを小夜ふけて傾くまでの月を見しかな この歌についての鑑賞が書かれてあります。これがまた露伴らしいユニークさであります。 恐れ入った妙作で、綿々たる情緒、傾くまでの月を見しかな、とあのように「かな」の二字のピンと響く「かな」は今に至るまで百千万度も使われたかなの中にも滅多にはない。あのような歌をよこされては、男子たるもの蜘蛛の糸に絡められた蜻蛉のようになってしまって、それこそカナ縛りにされたことだったろう。 どうです。真面目ような不真面目なような、天衣無縫の、まさに恐れ入った鑑賞文ですね。とっても面白いです。 面白いと言えば、この大江定基のエピソードで、私もかつてより知っていたお話がやはり書かれてありました。 「ネクロフィリア」の話ですね。 いえ、ネクロフィリアというのは、少し言い過ぎかも知れません。 ネクロフィリアというのは、「屍姦」のことでしょうが、この話は、死んだ恋人から離れられず死体と一緒に過ごしていたが、やがて死体が腐り始め異臭を放つに至って泣く泣く死体と別れたという話です。 この話は確か『宇治拾遺物語』に書いてあったんですかね。 ただこれに関しては、露伴はさほど独創的な解釈をしているわけではありません。どちらかといえば、少々スルー気味の扱いです。 これは、私のような下世話な読者の下品な期待には媚びないという格調の高さでありましょうかね、少し反省。 とまぁ、教養のない者(わたくしのことですな)は、まさにいかんとも度し難いわけでありまして、こういう隙間みたいなところばかりを探しては面白がっています。 稀代の大文豪の文学の粋のような作品を、何とも十分に味わうこともできないで困ったものであるのですが、ただそのわずかな片鱗からでも、露伴の凄さはひしひしと感じられるのでありました。 しかし、もっと真面目に反省しろよ、わたくし。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.04.02 09:02:29
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