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2011.04.16
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カテゴリ:明治期・自然主義

  『人生の幸福』正宗白鳥(岩波文庫)

 まったく、若かりし頃は「若気の至り」の語そのままに、思い出しても赤面する日々を送って参りました。(いえ、お前は今だって同じだろうといわれれば、なるほど全く同じでありますなー。)

 何を言い出しているかというと、よーするに、いろんな事に衒っちゃっていたんですね、あの頃。
 そして、とっても「偽悪的」に衒っていた、と。

 太宰治の小説(タイトル失念)に、「貧を衒う。安易なヒロイズムだ。」と喝破した表現がありましたが、確かに、「貧」も衒いましたねー。「無学」なんてのにも衒いました。
 自らを貶め得るような価値は、何だって衒っていたように思うんですがー、そんなふうに衒っていたものの一つに、「ニヒリズム」もありました。

 「ニヒリズム」、何となく、憧れるところありません?
 「虚無」なんて書いてしまうと、なんかそれだけで偉大な哲学的苦悩を背負った悲劇の主人公といった感じで、ゾクゾクしません?
 若く愚かな私は(愚かは今でもそのままですが)、なんかとってもかっこよく見えそうで、「虚無」を衒いたくって仕方がなかったんですねー。はは、は。あほです。

 さて、正宗白鳥であります。本ブログで一度短編集を取り上げたことがあります。
 その時の感想の中心を、私はこのように書きました。

 「でも今読むとこのニヒリズムは、その時代の社会状況や文化状況、あるいは時代の風習に乗っかかった(或いは一般常識故に反抗した)『気ままさ』でしかない感じが非常にします。」

 今回読んだのは、正宗白鳥の戯曲集であります。三作入っています。このみっつ。

   『人生の幸福』 『安土の春』 『光秀と紹巴』

 不明な私は正宗白鳥が戯曲を書いていることを知らなかったんですが、ちょっと調べてみますと、彼の長い文学的人生のうちのほんの一時期だけですね、戯曲を書いているのは。
 だから私が知らなかっても、何とかセーフ(?)と言うことで。

 しかし、本書を読みまして今回強く思ったのは、恐ろしいようなニヒリズムだと言うことでした。前回私が書いた、あれはニヒリズムじゃなくて「気まま」だとは、とても言えないような。
 例えば、表題になっている作品はこんな内容なんですね。

 男二人兄弟と腹違いの妹が一人。兄は妹のことを、今のうちに殺しておいた方が本人の幸福だと考えています。そして殺そうとして反対に妹に殺されてしまいます。
 弟は、殺されてしまった兄のことを、兄は気が違っていたから殺されて幸福だったと考えます。そして精神が錯乱し、兄を殺したのは自分だと思ってしまいます。
 妹は、上の兄を殺したのは自分だと思っている下の兄が発狂したことを、何も分からなくなって幸福だと考えます。そして本当は上の兄を殺したのは自分だと医者に告白し、その医者から彼女は発狂してしまったと思われ、しかしその方が幸福かも知れないと思われます。

 こんな話です。……うーん。凄いですね。「ニヒリズム=虚無」の連鎖。

 同じく所収の『安土の春』に織田信長が出てくるのですが、彼は「人間は脆いものだな」という科白を何度か呟きます。
 それは、殺してしまえと命じた家来が、本当に死んだことを別の家来に確認した感想であったり、馬を駆けていて、街道で遊んでいた百姓の子供を二人踏みつぶしたことを確認しての感想であったりします。
 この作品における信長の存在は、究極の「ニヒリズム」の具現化であるかのごとくに描かれています。

 えーっと、ちょっと安易にネットで「ニヒリズム」を調べてみたのですが、それを簡単に書くとこんな定義になっています。

 1.真理や道徳的価値の客観的根拠を認めない立場。虚無主義。
 2.生存は無意味とする態度。

 しかし、こんな作品を読んでいると、かつて自分が「ニヒリズム」を衒っていたことの愚かさとか恥ずかしさを強烈に感じます。
 そして、正宗白鳥の「筋金入りの」というか「骨絡みの」虚無に、よくこんな思想を内包しながら、人間は素面で生き続けられるものだなと(確かニーチェとかモーパッサンなんかは、自殺はしませんでしたが発狂したのではなかったかしら)、感心というか驚異というか、……うーん、なかなか人間って、複雑なものですねー。


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Last updated  2011.04.16 08:48:47
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