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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2012.02.22
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  『聖ヨハネ病院にて・大懺悔』上林暁(講談社文芸文庫)

 えー、前回の続きであります。
 前回述べていたのは、表題になっている二つの小説のうちの有名な方、『聖ヨハネ病院にて』という作品についてでありました。
 私は本作をこんな風に紹介したんですね。

 えー、彼は、近代日本文学の普遍の三大テーマ「金・女・病」のうちの三つめ「病」のヴァリエーション「病妻もの」のさらにその一分野「狂妻もの」という「ニューフェース」です、どうぞよろしくー。
 ……というふうに。

 (少し「閑話」なんですが、現代になりましてさすがに「金・女・病」という三大テーマはかなり色あせてきましたねー。それは、これらのテーマがもはや「喜劇テーマ」になっちゃったからでしょうね。作家を取り巻く自然的社会的環境は、以前とは比べものにならないくらい広く深く複雑多岐にわたっております。)

 さて話を戻しまして、「狂妻もの」が近代日本文学史の中で相対的にニューフェースであると書いていたら、何とおっしゃるうさぎさんそれならこれをどう見るか、と二つの作品が出てきたというところまで述べていました。その二作品とはこれらです。

   『舞姫』森鴎外  『智恵子抄』高村光太郎

 えーっと、ちょっと考えてみたのですがね、まず『舞姫』ですが、これは恋人の狂気を正面から扱った作品ではありませんよね。むしろ前回私が説いたように、狂気に陥った恋人を、それを切っ掛けにしてあっさり捨ててしまう話であります。
 (少し宣伝を。『舞姫』のエリスの狂気につきましては、わたくし少々思うところがありまして、本ブログにまとめて書かせていただきました。あわせてご覧いただけますととてもありがたく存じます。)

 私はこの『舞姫』の、狂気の恋人の扱いについて、少し似ているような似ていないような小説を思いだしたのですが、深沢七郎の『月のアペニン山』という小説です。この作品も、妻の狂気が妻との縁の切れ目という、徹底的に身も蓋もない作品でした。
 ということで、『舞姫』は、解決。(かな?)

 えーっと、次の『智恵子抄』は、なかなか難物ですねー。
 しかし、ちょっと振り返ってみたのですが、今『智恵子抄』にそんなに拘わっている場合ではないんですよねー。テーマは上林暁なんですよねー。それも、冒頭の文庫本の感想として私がもっとも興味深く思ったのは、別の作品なんですよねー。

 ということで、かなり雑に、えいやっとやってしまいますが、『智恵子抄』はあれは詩集ですね。それに確か吉本隆明が書いていたと思いますが、『智恵子抄』に描かれる二人の関係は現実軽視、理想化が甚だしい、と。
 と、やはり散文作品ではないというところがネックである、というところで後はむにゃむにゃぁと勘弁してください。すみません。

 さて、上林暁の冒頭の短編集ですが、今まで述べてきた「病妻もの」の作品も含みつつ、大きく私は二つの感想を持ちました。
 まずひとつめは、圧倒的な文章力であります。
 そしてこの文章力の特徴としては、誠実さとユーモアの同居の見られる、澄み渡った好感溢れるものとなっているということであります。

 この文体は、いったいどんな系譜の中に位置づけられるのでしょうかね。
 私の思いつきの、感覚的なものではありますが、敢えて言いますと、中勘助の文章当たりじゃないかと思います。
 描き方の、視点と重心の低さが何より読んでいて快いです。これは、ほぼ全作品に共通します。以前から私の感じていることですが、文章力というのはあたかも野球の守備力のごとく作品による好不調の波があまりありません。
 一人の作家を好きになる(嫌いになる)大きな要素ではないかと思います。

 ところがその誠実さとユーモア漂う文体で何を描いているかというと、「私小説」なんですね(一作だけ客観小説が入っていますが)。
 確か、尾崎一雄の文章もこんな感じで、そして「私小説」であります。
 この二つは、セットなんでしょうか。

 しかし「私小説」の限界は、本文庫中に収録されている『姫鏡台』に戯画的自虐的に描かれているように、現代ではもはや明らかという気がします。
 車谷長吉なんかの作品が典型的だと私は思うのですが、もはや一作家の経験する事項の描写からだけでは現代の文学的な課題は描ききれないということであります。

 でも、この文章力はいかにも捨てがたく、ここにたゆたっていると極めて心地よく、結局近代日本文学史の作品を読むとは、本作のこの鑑賞の形に一つの典型があるのではないかと、私はやや判断中止のまま作品に浸るのでありました。


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Last updated  2012.02.22 06:30:01
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