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2012.07.05
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カテゴリ:昭和期・新戯作派

  『右大臣実朝』太宰治(筑摩書房・太宰治全集6)

 太宰治の作家としての活動期は、大体3期に分けるのが基本となっているような気がするんですがー、簡単に年譜で確認するとこんな風になりますかね。

 ○前期・昭和8年~13年 (24歳~29歳) 
    主な作品……「魚服記」「思ひ出」「道化の華」
    主な出来事……自殺未遂・芥川賞候補・武蔵野病院入院・心中未遂

 ○中期・昭和14年~20年(30歳~36歳)
    主な作品……「富嶽百景」「女の決闘」「津軽」「お伽草子」
    主な出来事……結婚

 ○後期・昭和21年~23年(37歳~39歳)
    主な作品……「斜陽」「ヴィヨンの妻」「人間失格」「桜桃」
    主な出来事……入水自殺

 こんな感じでしょうかね。主な作品と主な出来事を少し書いただけで、「ストーリー」の見やすい生涯であることが分かりますね。(ついでに書いておきますと、昭和5年21歳の時に、太宰治は心中未遂をし、自殺幇助罪に問われています。)

 また、近代日本史の主な事項とパラレルにしてみても、「太宰治ストーリー」の細かなポイントが、けっこう見えてきそうな気がします。

   プロレタリア活動・転向・太平洋戦争・敗戦

 例えばこれらの日本史キーワードと重ね合わせても、太宰治の生涯が理解しやすいものであることが分かります。
 ……太宰治って、「わかりやすい」作家だったんですね。

 というのは、半分は冗談なんですが、一方太宰治が極めて特異的であるのは、太宰の才能が最も開花している時は、日本社会が最も下を向いている時であると言うことで、これは「たまたま」では、やはり、ないですよね。

 それは結局、太宰の才能とは、彼のほとんど躾られなかった基本的生活習慣に対して、かなりの強い抵抗が掛かり、そっち方面に惹きつけられるものが現実的に何も存在しなくなって(つまり戦争中で様々な享楽的物資が払底してしまって)、そこで初めて頭をもたげるという、……うーん、なかなか難儀な「才能」でありますなー。

 さて、冒頭の『右大臣実朝』であります。「傑作の森」のような太宰治中期において、しかしこの作品は、少々「地味」な感じがするのですが、たぶんそれは当たっていますよね。実はわたくし、本作は初めて読みました。

 太宰作品については、けっこう網羅したつもりでいたのですが、全集を第一巻からぜーんぶ読むという形での馴染み方は、太宰についてはしなかったものですから、細かく見ていくとまだまだけっこう読んでいない作品があります。「火の鳥」とか「新ハムレット」「二十世紀旗手」とか。

 読んでみて、太宰作品には珍しい読みにくさを感じました。
 話がなかなか進んでいかないんですね。『吾妻鑑』の書き下し文と平行して物語が進んでゆくという展開が、どうも、筆者の傑出した小説テクニックを生かしていないように思いました。

 話が突然面白くなるのは「公暁」が出てきてからですね。
 実は、この「公暁」に、太宰は自分と同じものを見ているんですね。例えば『斜陽』において「直治」が語っているようなセリフが、「公暁」のそれの中に随所に見られます。

 一方「実朝」のほうは、どうなのでしょうか。
 同類の太宰作品上の人物としては、私は『津軽』の「タケ」や、『斜陽』の「母親」に近いものを感じます。しかし、これらは女性であって、ひょっとしたら筆者は、男性版のそんな人物像が書きたかったのかなとも思います。
 しかし男性にすると、そこに欠点や比較など、リアリズムに則るようなものも書かねばならず、結局一方に「公暁」をおいての「実朝」、という形になったのか、と。

 そしてそのことが、作品前半の「面白くなさ」にも繋がっているようで、「実朝」中心の前半が、物語として十分に機能していないということは、太宰が、男の「タケ」や「母親」をうまく描けないでいたと言うことではないでしょうか。

 太宰治は、なかなか自らに骨がらみの作家であります。
 確か自作中にも、この作家は想像力が極めて乏しく云々という表現があり、まさかこんなフレーズは全く信じてはいませんが、自分の実感しづらいパーソナリティーは、けっこう書きにくかったのかも知れません。


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Last updated  2012.07.05 14:27:27
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