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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2013.01.13
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  『文学のレッスン』丸谷才一(新潮社)

 えーっと、丸谷氏は去年お亡くなりになりましたね。享年はおいくつでいらっしゃったんでしたか。
 ちょっと調べてみますと、1925年生まれとありました。
 ご長寿でいらっしゃいましたよね。87才です。

 芸術の世界でも、はっきり言うと、長生きしたものの勝ち、と言うところがありますよね。特に中年くらいまでに一応、功なり名を遂げた後ですと。後はその「利息」でくっていけるという、少々はしたない言い方ですが、そんな感じの所があるように思います。

 でも、最後の最後まで現役で頑張るってことですと、やはりなかなか難しそうですね。ご長寿で、半世紀くらい頑張って創作の現役であった方は、あまりいらっしゃいませんですよね。長期間にわたって第一線でクリエイティブな仕事ができるとなると、それは生半可な才能では難しいんだと思います。

 ……谷崎潤一郎、と言う名がまず浮かぶんですが、えーっと、野上八重子という別格の方もいらっしゃいましたよね。あの方は99才まで現役の小説家でいらっしゃいました。

 最後まで現役でいらっしゃった丸谷才一氏が亡くなって、次の世代の日本文学の現役長老って、どなたあたりになるのでしょうね。
 たぶん第三の新人の次の世代くらいだと思います。そうすると、大江健三郎あたりですか。筒井康隆なんて少々異色な方もいらっしゃいますね。
 まぁ、そのへんになるんですかね。大いに頑張っていただきたいものであります。

 ということで、冒頭の本の読書報告であります。この本はインタビュー集ですね。『考える人』という雑誌に(この雑誌は季刊の雑誌です。わたくし一度だけ買ったことがあります。その時は村上春樹のロング・インタビューが載っていました)、8回、断続的に掲載されたのをまとめています。各回のテーマはこんな風にタイトルが付いています。

  『【短編小説】もしも雑誌がなかったら』
  『【長編小説】どこからきてどこへゆくのか』


 こんな感じで、以下、

  【伝記・自伝】【歴史】【批評】【エッセイ】【戯曲】【詩】

 と、計8回なわけですが、とにかくその博覧強記に圧倒されます。
 どうしたらそんなに何でも知っているのかな、と言う感じがします。それに加えて、こんなところが私としてはとっても琴線に触れてしまうんですね。

 小林秀雄の批評が批評の原型であるというお話でしたが、しかしそれ以後の批評家が小林秀雄にまさる面はあるんです。小林秀雄の文章は威勢がよくて歯切れがよくて、気持ちがいいけれど、しかし何をいっているのかがはっきりしない。中村光夫や山本憲吉の文章は歯切れのよさという点では小林秀雄に劣るかもしれないが、少なくとも何をいっているのかはよくわかる。そういう意味で、小林秀雄の批評は明治憲法の文体に似ている。

 最後の所なんかちょっと笑ってしまいますが、とにかく我々素人がこんな事をいえば、顰蹙か軽蔑を買いそうな指摘がいっぱい散らばっていて、読んでいてとてもストレス解消になります。もう一つそんな個所を挙げてみますね。

 近、現代の日本の劇作家では誰が偉大なのか。世間ではふつう三島由紀夫というでしょうね。だけど僕にはぴんとこないんですよ。うまいことはうまい。とてもうまいけれど、でも何かたわいがないんですね、僕にとっては。これは彼の小説についてもいえることなんですが。三島の芝居では、『鰯売恋曳網』とか『鹿鳴館』などがいいと思うんですよ。いいけれども、あれはウェルメイド・プレイ、よくできた芝居であって、それ以上のものではないような気がする。このたわいもないという感じは、三島由紀夫と並び称される木下順二の芝居についてもいえるでしょう。たとえば『夕鶴』という芝居、はたしてどれだけのものなのかしら。

 ……あのー、「雑魚が鯨をもって自らを例える」とかいう諺があるのをわたくし、知っているんですがね。そんなつもりはないんですが、ちょっとこんな引用をしてみます。

 さて、木下順二戯曲ですが、私も民話を題材にした作品をいくつか読みましたが、私としましては、何か少々物足りないものが残った印象が続きました。

 この引用は、何を隠そう私が本ブログで木下順二の作品を報告した時に書いた一文でありまして、舞台『夕鶴』の物足りなさについても触れています。
 一方丸谷氏は本書で、「たわいもない」と書いています。
 「たわいもない」。うーん、上手にいいますよねー。

 えー、やはり「雑魚が鯨」になりかかっておりますが、しかし本書は、そんな知的興奮に溢れたインタビュー集でありました。
 こういう本の読後感って、おいしい食事をした後の感覚ととっても似ていますね。

 「あー、おいしかった。」

 全くそのものであります。


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Last updated  2013.01.13 18:01:48
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