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2013.08.19
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  『ドグラ・マグラ』夢野久作(角川文庫)

 もう、少し前の話になるのですが、電子書籍リーダーを買いました。
 あれこれと使ってみましたが、確かに便利ですね。思った以上に読みやすい。何より、文字の大きさを自由に変えることができるというのは、年輩者にとっては圧倒的に便利であります。

 で、どんな作品を読んでいるかと言いますと、もっぱら「青空文庫」です。
 本ブログの傾向からも分かるように、わたくしの嗜好としましては、できたらもうお亡くなりになっている方の小説、あるいは昭和期以前の文芸作品ということで、昭和期全体をカバーと迄はまだいっていませんが、それでも青空文庫は私の好みにかなりぴったりであります。とてもうれしい。

 そして青空文庫以外にも、ネットを見ていて、ふっとダウンロード無料の作品を発見したりなんかして、これも「ラッキー」と、とても嬉しいですね。
 その一つに、こんな漫画がありました。

  『ブラック・ジャックによろしく』佐藤秀峰

 昔はともかく今の漫画界のことはほぼ何も知りませんので、この作品のできが相対的にどんなものなのか私には判断できないのですが(ただ、日本が世界に誇るこの漫画というコンテンツがかなり優れている、ハイレベルなものであることは何となく知っています)、とても感動的な作品でした。

 主人公はインターンのお医者さんであります。医療がテーマのお話なんですね。
 インターンの青年が、内科・外科・小児科等の専門医局に次々に配置され、医療現場の様々なドラマを経験していくというお話、つまり一種の「ビルドゥングス・ロマン(=教養小説)」です。
 そして後半、精神科医療の話になって、作品は一気に重くしんどく、そして感動的なものになります。

 さて、その「精神科医療」です。
 やっと冒頭の小説のテーマに繋がったのですが、推理小説界の「三大奇書」の一つと言われる『ドグラ・マグラ』が深く描こうとしているのが、この「精神科医療」であります。

 ……ただ、ただねぇ、推理小説の中で、それも「奇書」と呼ばれるような作品の中で、妄想とか脳とか精神異常とかの話になるわけですね。そして本作品の成立は昭和十年です。
 つまり、本作が現在も現役で読めるかと言えば、なかなか難しいと私はまず思いました。

 一言で言いますと「冗漫」さが気になるんですね。
 ただ同時に思うのは、この冗漫さも或いは作品の狙いの一つではないかということです。
 単に作品の長さと言うだけならば、本書は角川文庫上下二冊合計650ページほどですので、長すぎると言うほどのものではありません。ただこの冗漫さが、かなり読みづらいと言うことです。

 さて、650ページほどの小説で、かつ冗漫さ(=読みづらさ)も作品の効果に入れているとすれば、その効果とは何かと考えれば、やはり「シュール・レアリズム」でしょうか。本作の評として用いられることのある文言ですが、たしかに読んでいて、例えばサルバドール・ダリの絵画のような、不思議な戸惑いの感覚を生み出すところがあります。

 そしてダリの絵画に不思議な静謐空間が描かれているように、確かにこの冗漫さは、本作に不思議な広がりをもたらしているようにも思えます。
 さらにそこに、「記憶の遺伝」という本作の鍵を加えると(記憶は遺伝するかというテーマは幽霊は本当にいるのかというテーマと似て、とても面白いものです。超常現象話題は古今東西絶えることがありません)、ここに一つの「現実の別解」が出てくるような気がします。
 「現実の別解」とはつまり、一つの世界観のことであり、その構築こそが筆者の制作の源泉であったのでしょう。

 昭和初年の精神病治療の話が、現在もリアリティを持つかについては判断の難しいところでありながら、筆者がこれだけの手間暇を掛けて独創的な「現実の別解」を作るには、精神の世界というキーワードはやはり外せないものであったと思います。
 われわれはそれを冗漫なほどにこだわって描く筆者の情熱に、いかにも本作に「奇書」という褒め言葉を贈るに相応しいものを見るのであります。


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Last updated  2013.08.19 14:18:50
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