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2013.11.17
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カテゴリ:昭和期・後半女性

  『幽界森娘異聞』笙野頼子(講談社文庫)

 ……ふーむ、どーも、よく分からないのですがね。
 何がって、……何がといわれれば、なんとなくますます混乱してくるのですがー。

 ……えーっと、この筆者の作品についてはわたくし、前に一度報告していますね。
 その時、返り討ちにされたと私は書いているのですが、性懲りもなく、今回も勝手に勝負を挑みそしてやはりぼこぼこにやられたという感じでありましょうか。

 一つ分かったことといえば、この筆者の書く作品は、どういう方向であるかは定かならねど、ますますヒートアップしていると言うことであります。

 どんどん過激になっているものの一つは、例えば、高橋源一郎の楽屋落ちフラグメントの如き描写でありますね。
 ただ「楽屋落ち」と書くには、日本文学には偉大なる楽屋落ちである「私小説」の伝統がありますので、なに、それは伝統に倣っただけであるといえないわけでもありません。(かなっ?)
 例えばこんな感じですね。

 そうそうここで、いきなり森娘の経歴賞罰をさっと書き写す。別に「ストーリー展開の必要上(COMで覚えた言葉だ多分)」って程のものではないけど森娘とは、何かを、今から最小限説明する。残念、フィクションとして勝手放題しようと思っていたのに。でも「○○の娘、だけでは誰か判らない」と人々から言われたからこんな事に。だがまあ、ここに書いてあるどなたかの経歴と森娘本人とは何の関係もないと誓っておきましょう。

 どうですか。少し古いところでは、確か、筒井康隆がこんな感じでストーリーを展開する小説を書いていたように思い出しますが、えー、何と言いますかー、こんなことって、本当に書かねばならないんですかね。

 とにかく私は、一つはそれらの記述に、ちょっとついていけませんでした。
 ただ読みながら、いろんな事は考えたのでありまして、例えば、そういえば谷崎潤一郎の『吉野葛』なんて小説もこんな風な展開じゃなかったかしら、とかあれこれ思い出していたんですね。

 でも、『吉野葛』そのものの内容を私がすっかり忘れているものだから(いえ、ちょっと文庫本を取り出して軽くおさらいをすればすぐに確認はできるんですけれども)、本当に谷崎作品に似ているのかどうかはよく分かりません。

 そして二つ目、次にちょっと私が堪えられなかったのは、これもそういえば吉行理恵の小説を読んだ時に感じたことだったよなーとか思い出したのですが、本作の大切な部分を占めている(んでしょうな、たぶん、よくわかんないんですが)のが「猫話」であるということであります。

 猫話、ってありますよねー、やはり。
 あいかわらず、いろんな人が書いていそうでありますね。
 そして、これは私の偏見かなとは思うんですが、どーも猫話って、客観性に欠けて自閉的な気がするんですがねー。
 やっぱり偏見でありましょーかねー。

 そんなこんなを思いながら本作を読んでいましたら、後半にこんな事が書いてありまして、とても興味深かったです、これ。

 この前の連載に入れようと思って入らなかった文章が今、目の前のディスプレイに出てる。
「純文学の判らない読者その一、それは活字をぜんぶ現実だと信じてしまう人。その二、文章の醍醐味を楽しめない人。その三、作家らしい生活をしていないというだけの理由で、その作家の作品を読まずにけなしている人。その四、新しい小説の前ですぐにオレこれ食えないからこんなの要らないとか言ってしまう人、その五、物語を読むためにだけ小説を読む人、その六、今の小説を全部古典・神話の本歌取りと勝手に決め、一番どうでもいい部分を各々比較検討する人、その七、二との関連で境界例作品の通俗部分だけを読んで意見を言い、だからこの作品は意味ないとか平気で言う人……」


 ……、うーん、まー、本作に返り討ちされたって事で言えば、わたくしも「純文学の判らない読者」なんでしょうねぇ。
 じゃ、私はその何番に当たるのだろうかと、ちょっとじっくり読んだんですが。
 うーん、五か六の後半あたりか、七の「境界例」ってのは、何のことかよく知らないのですがー。

 とにかく一つ判ったことは、やはり私は最前衛の文学作品については、どーもその文法が判っていないってことでありましょうか。
 でも、でも私は、純文学については、(判っちゃいないくせにではありましょうが)今しばし、フェイバレットでいるつもりであるのですが……。


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Last updated  2013.11.17 16:52:30
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