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2014.06.15
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カテゴリ:大正期・白樺派

  『布施太子の入山』倉田百三(岩波文庫)

 宮沢賢治の有名な詩に、「雨ニモマケズ」というのがありますね。
 もっともあの「詩」は、賢治の亡くなった後に残されたノートに書いてあったという、だから完成作かどうかわからず、タイトルも第一行をそのまま便宜的に使っているだけで、第一、賢治が詩として考えていたのかどうかも分からないと聞く作品ですが、にもかかわらず、この「詩」は広く人口に膾炙し、現在に至っています。(きっと教科書か何かに載っているんだと思うんですが……。)
 ともあれ、その「詩」の最後の部分に、こんなフレーズがあります。

  ミンナニデクノボートヨバレ
  ホメラレモセズ
  クニモサレズ
  サウイフモノニ
  ワタシハナリタイ


 わたくし、少しだけ、自信があるんですがね。
 いえ、何の自信かというと、「サウイフモノニ」なりかかっている自信なんですがね。
 というのも、まー、わたくしもいたずらに馬齢を重ね、人生のテンカウントを聞くのも間近かという今になったせいかもしれませんが、振り返ってみれば我が人生はまことに「ホメラレモセズ クニモサレズ」の人生でした。

 でも考えてみれば、それはまぁ、結構とても素晴らしい人生だったんですね。今私は、素直にそのことを認めたいと思っています。
 しかし問題は、引用一行目の「ミンナニデクノボートヨバレ」の部分であります。
 これは、情けないながら、わたくしにまだ変な色気心があるせいか、陰でそう呼ばれるならいざ知らず(きっとそう呼ばれているとは思うんですが)、いまだに「サウイフモノニ」「ナリタイ」心境に達していません。
 まことに未熟者であり、慙愧の至りであります。

 さて、何の話かというと、「宗教」の話であります。
 で、この種の話は、実にビミョーに難しい。ましてやネット上に、この話題はほとんど「無謀」であります。
 しかし冒頭の戯曲の描いているのはこれでありまして、さらに絞り込んだテーマは、主人公「布施太子」の名前からもわかるように、一切の固有財をすべて布施することを天に誓った古代インドの王子の物語であります。

 落ち着いて考えてみれば、集団の持つ思想のイメージに青春性の強く感じられる「白樺派」の作家らしいテーマではありますわね。
 そして、また白樺派らしい理想的かつ空想的かつ非現実的な。

 すべてを布施する誓いを立てた王子は、悪人たちに何度となく騙され、すべての衣類財宝はもちろん、幼い息子娘まで失い、そして最後には最愛の妻さえも悪人に「布施」してしまいます。

 はっきり言いますと、息子娘を「布施」するあたりから、読んでいてどうにも二つの感情が拭い難く心に浮かんできました。
 それは、グロテスクと滑稽性であります。
 ストーリーの上で、徹底的に固有財を否定するために息子娘そして妻まで差し出すというのはどういう意味であろうかということであります。
 この展開は、もちろんひとつの「典型」として描いたものではありましょうが、ここまで書かれてしまうと、我々の理性の中に根を張っているモラル的価値観が、作品をグロテスクと訴え、非現実的だという評価を引出し、そしてむしろ滑稽な物だとしてしまいます。

 しかしその一方で、私は実は読んでいないのですが『旧約聖書』の中には、この話に類する物語もあると聞きます。
 また、確かキリスト教作家遠藤周作が、この王子の行為によく似た話のことを書いていたように思い出します。

 文学などに関わっていると、小賢しい人知を弾き飛ばしてしまうような絶対的な「信仰」というものには、やはり否定しがたい魅力を感じます。
 しかしその一方で、達観された「信仰」の先にはもはや文学はなく、文学とは、混沌と混乱の中で、ただ彷徨している姿の中にのみ存在するのだろうと、私はぼんやりと思うのでありますが……。


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Last updated  2014.06.15 16:25:58
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