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2015.12.23
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カテゴリ:明治期・自然主義

  『生ひ立ちの記』島崎藤村(岩波文庫)

 私の持っているこの岩波文庫は、1943年第1刷発行と奥付にあります。(で、1993年第14刷のものです。)だからタイトルも「生ひ立ち」と歴史的仮名遣いのままなんですね。
 私は古本屋でこの本を買いましたが、おそらく岩波文庫が時々(なのかな、よく知りませんが)やっている「リクエスト復刊」というやつじゃないかなと思います。

 今ふと気付いて調べてみたのですが、筆者島崎藤村はまさにこの1943年に亡くなっているんですね。亡くなったのが8月22日で、上記には1943年第1刷としか書きませんでしたが、奥付には本当は5月5日とまで書いてあります。

 ということは、本書の最後に後書きのように「『生ひ立ちの記』の後に」という筆者自身の文章があるのですが、この一文はひょっとしたらこの岩波文庫用の最晩年の藤村のものなのかも知れませんね。

 というのはついでのような話ではありますが、以下の私の書きたい内容と少し掠っていると言えなくもないことで、以下、順を追って書いていきます。

 本書には「生ひ立ちの記」と「芽生」(これはたぶん「めばえ」と読むのでしょうが)という二作品が収録されています。読み始めてから気が付いたのですが、この二作は随筆ですかね。(私小説・心境小説系の作品には小説も随筆もまるで一緒というのがけっこうあって、わたくしそういうの、ちょっとイヤなんですね。)

 で、いつ書かれた作品なのかというと、前者については、上記の藤村自身の後書きに書かれてあるものの、後者についてはどこにも書いていないんですね。これは、読み終えて改めて内容を頭の中で整理していこうとすると(特に私小説系作家の場合は作家自身の年譜もかなり重要になってきて)、いつの作品なのかわからないのはちょっと不便であります。

 二作品の内容は、前者は筆者自身の10歳前後つまり少年時代の思い出。
 後者は、藤村が『破戒』を書いていた頃の話、例の有名な、藤村が『破戒』を書くために経済的に始末に始末を重ね、妻は鳥目になってしまうし、3人いた幼女たちは全員がことごとく栄養失調のため亡くなってしまうという話であります。

 どちらの作品が興味深い話かと言えば(まー、「興味深い」は少々言葉はよくないかもしれませんが)、娘が三人が亡くなる方の話であります。

 実はこのあたりの実際の藤村の年譜を調べてみたのですが、今の時代の感覚で読んでみると、いろいろ考えさせられる年譜なんですが、ちょっと書いてみますね。

  1899年(明治32年)結婚。(小諸在)
  1900年(明治33年)長女生誕。
  1902年(明治35年)次女生誕。
  1904年(明治37年)三女生誕。
  1905年(明治38年)上京。三女死去。長男生誕。
  1906年(明治39年)『破戒』出版。次女長女死去。
  1907年(明治40年)次男生誕。
  1908年(明治41年)「春」連載。三男生誕。
  1910年(明治43年)「家」連載。四女生誕。妻死去。
  1912年(大正元年) 「生ひ立ちの記」(婦人画報)連載。
  1913年(大正2年) 姪と過ちを犯し懐妊。フランスへ渡る。

 どうですか。パッと見てまず思うのは、まーこのあたりの時代ではこの数値は平均的なのかもしれませんが、よくまー、次々と子供が産まれたものだなということですよね。
 藤村の妻は冬子さんという名前の方だそうで、お年がよくわからないのですが、とにかく結婚生活11年でその間7人の子供を産んでいます。で、最後は産後の肥立ちが悪くて亡くなったとか。

 ……うーん。かつての日本人はこんな感じだったんでしょうかねー。(女性にとって結婚ってなんなのだろうとまで、少し思ってしまいますね。だってこの冬子さん、結婚していなければ、こんな「早死に」はきっとしていませんよ……。)
 『破戒』誕生秘話であります。(別に秘話でもないか。)

 そしてもう一つ、本文庫本収録の「生ひ立ちの記」が婦人画報に連載された時期に、ちょうど藤村のこれもまた有名な姪との過ち事件が重なっているんですね。

 「生ひ立ちの記」の内容というのは、少年時代身の回りにいた女性達(そのほとんどは自分のいろんな世話をしてくれる年上の女性達)について、ある婦人に送る手紙という形式を取って綴るというものです。
 さらに婦人画報連載ということからも想像がつくように、まるで中勘助の『銀の匙』のようなしみじみ系の、少年の眼から見た年上の女性達との淡くも懐かしい触れ合いが描かれているんですね。

 ……まー、相手はプロの物書きですから、私生活においてちょっと困った女性関係を実践しつつ、作品においては清純派であったって悪いことも何もありませんが、こういうところを見ると、この姪との事件を綴った『新生』を取り上げて芥川や谷崎が藤村をとても嫌ったというのは、なんかとっても分かるような気がします。

 という話なんですね。
 純粋に作品の内容だけを読みますと決して後味の悪いものではないのですが、あれこれと筆者をめぐる事実と重ね合わせていきますと(いたいけな娘三人が連続して栄養失調で亡くなるってのも、どうなんでしょう)、ちょっと素直にしみじみもしていられないかなという、なんというかいわく言い難い、そんな作品でありました。


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Last updated  2015.12.23 17:54:45
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