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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2019.09.26
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  『死霊Ⅰ』埴谷雄高(講談社文芸文庫)

 ……うーん、やはり。
 ……やはり、第一次戦後派のあたりが弱い、な、と。

 ……えっと、何の話かと申しますと、ははん、とお気づきの方もいらっしゃるだろうと思いますが、わたくしの近代日本文学読書傾向の弱点のことですね。

 今を去ること10年ほど前に、何の間違いか、よしこれからは明治以降の日本文学、特に小説をしらみつぶしめった切りに、ブルドーザーの如くことごとく読んでくれるわ、と、わたくし、なんか錯覚した計画を立てまして、まぁ、それでもその後は地道にコツコツと読んでまいりました。

 でも自分でもわかっているのですが、どうしてもいくつかの流派・時代の作品があまり読めていないんですね。
 その一つが、いわゆる第一次戦後派と呼ばれる方々の作品です。

 なぜ読めないかの理由も大体わかっています。
 あまり積極的に手を出そうかという気にならないんですね。やはり、いかにもまじめで重苦しそうであります。
 でも本当は、えいやっと思い切って読み始めたら、きっとさほど面白くないこともないんじゃないか、というあたりまでもわかっています。(さらにわたくし、密かに思うのですが、ここまでわかるのって、実は結構大変だと思うのですが、どうでしょうか。)

 そんな第一次戦後派の、いわば飛車角とでも言うべき作品が、今回の『死霊』であります。(ちなみに、今私は「飛車角」と書きましたが、どちらが飛車でどちらが角なのかもわかりませんが、その一方の作品を何と考えているかと言いますと、やはりあれですかね。野間宏『青年の環』。)

 というわけで『死霊』でありますが、今回はその「Ⅰ」だけであります。
 この後続けて読んでいく、……という計画は、実は今のところ立てていません。
 はっきり書くと、まー、この一冊でいいか、と。(本音は、読むのが結構ツライ!)

 そもそも私がこの作品を初めて知ったのは、たぶん高校3年生か、大学1年生あたりじゃなかったかと思い出すのですが、その頃「死霊第5章」が四半世紀ぶりに書かれたと話題になり、第1章から第5章までをまとめた単行本が出版されました。
 私は、その新刊の『死霊』を本屋で手に取って、買おうか買うまいか、かなりじーーと迷ったのを覚えています。

 なぜ迷ったかは、この小説が極めて難解であるという書評などを読んでいたからですね。
 今では、自らの脳細胞が複雑な思考には全く耐えられないことを自覚していますが、それなりに突っ張っていたその頃の私も、自分の脳細胞はかなりできが悪いんじゃないかということに、やっと薄々気付き始めたのでした。
 そして、この小説は私には理解できそうもない、と。

 で、手に取っただけで買うこともなく月日はあっという間に流れ、この度読もうと意志するに至ったのは、なーに、簡単な話であります。
 あの時一冊に5章まであったのが、3章で一冊になっていたからですね。
 これくらいの分量なら難しくても、理解しようなんて思わなければ読みきれるのではないかと、まー、年を取って私という人間がかなり軽薄になってしまったわけですね。
 そして読み始めると、えらいもので、その通り読めてしまいました。

 そして読後、私は、考えました。
 結構面白かったんじゃないか、と。

 いえ、書かれてあることのほとんどがわかっていないのは間違いありません。
 ……どれ、今日も少し読んでみるかと、手に取って読み始めて数分したら寝ている自分に気が付いたことも再三あります。
 しかし、にもかかわらず、やはりこの小説には、間違いない、そんな私にもわかる魅力がある、と。
 それを、本書の極めて「表面的」読書が終わった後に、考えてみました。

 かつて澁澤龍彦が、本書は難解ではないと言ったとか聞きますが、まー、澁澤とか三島とか、あんなある意味特殊な脳細胞を持っていた人の感想はともかく、でもしかし、たしかに難しく書かれてあるわけではありません。

 そもそもがストーリーがあってないようなものだから(まして3章までですから)、途中で居眠りしながらでも、これはそんなものでいいのだと居直ってしまいますと、結局ずっといろんな人物が論争しているだけのお話なんで、居眠りから目覚めてそのままに字面を追い直して、それなりに読めてしまうわけですね。

 話は少し飛ぶのですが、うちのそばの図書館のホームページで『死霊』を検索してみましたら、山のように解説書らしいものがあることがわかりました。
 なるほど、こんなのを何冊かでも読めば、より深い理解ができるのだなと思いましたが、でも少し考えて、やめました。
 なんか、少し違うんじゃないか、と思ったんですね。

 ただこの度一冊だけ、解説書ではありませんが、埴谷雄高がらみでこんな本を読みました。これはむかーし、私が古本屋さんで何となく買った本です。

  『さびしい文学者の時代・「妄想病」対「躁鬱病」対談』
          埴谷雄高・北杜夫(中央公論社)

 たぶん私はこの対談集を、北杜夫への興味で買ったのだと思います。でも買っただけで読んでいなかったのを、この度『死霊Ⅰ』を読みつつ間に挟んで読みました。

 とっても面白かったです。
 埴谷雄高が、『死霊』執筆に絡んだ解説めいたことをたくさん述べています。
 自分はこんなつもりで『死霊』を書いた、書いている、書くつもりだ、といったことですね。(ちょうど第7章を書き始めてちっとも進まないと述べています。)

 その、エピソードがとても面白い。
 人類の「最後の審判」の話。「無限」について。死んでも成長し続けるという事について。のっぺらぼう、とは。などなど。
 そして、実際に『死霊Ⅰ』を読んでみると、そんな話が書かれてあるんですね。(私の読んだ範囲ではまだ書かれていない話題もありましたが。)

 そもそも作品が始まって少ししたところに、「自同律の不快」なんてテーマが出てきます。はじめの部分だけじゃなくその後も再三出てくるのですが、このテーマが、やはりとっても興味深いではありませんか。
 「俺は、俺である」と呟くことがどうしてもできない、そう呟くことは名状しがたい不快であるなんて、いわれてみれば、とてもキュートな問い掛けであります。

 で、わたくし考えてみました。そしてトイレで、ふっと思いつきました。
 この興味深さは、そうだ、これはほら話ではないのか、と。
 そうだそうだ、これはほら話の面白さと同じだ、と思い至ったのであります。

 筆者埴谷雄高は、完全に昼夜が逆転して、そして幾晩も幾晩もひたすら「妄想」し続けたそうであります。
 その妄想の結果が、ほら話でなくて何でありましょうか。

 きっと本書の、難しい哲学的な文芸評論めいたものは、すでにたくさん出版されているのでしょう。
 しかし、『死霊』とは、わたくし、この度、3章を読んだこの時点においては、ほら吹き爺さんのほら話である、とまとめさせていただきました。

 今後、その変更はあるのか、それについては、申し訳ありませんが、何とも予測がつきません。

 しかし「ほら話」ということで言いますと、最近ほら話のように読者に夢を見させてくれる小説は極めて少なく貴重なのだがと、敵前逃亡意識も少し持ってもいる私は、ぼそっと呟いたのでありました。


 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 





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Last updated  2019.09.26 08:23:15
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