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2020.04.05
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  『山月記・李陵』中島敦(岩波文庫)

 本短編集には11の作品が収録されています。いずれも甲乙つけがたい名品の集まりですが、今回の読書報告は、その中から「山月記」についてだけ、以下に考えてみたいと思っています。

 「山月記」は、高校の国語の授業で習ったなじみある作品で、さらに加えて、実はわたくし、すでに「山月記」について図書館でいろいろ借りて、恥ずかしながらちょっと調べてみたんですね。
 その報告を少し兼ねさせてもらおうかな、ということで。

 合わせて、以下に書く内容は、当たり前ながら学術的な論文でも何でもありません。この後、先に披歴いたしますが、わたくしが参考にした何冊かの文献の読みかじりの報告です。

 それでは剽窃ではないか、といわれると、あたふたと戸惑ってしまうのですが、恐れ入りますが、そのあたりをよろしくご理解ください。お願い。

 では、まず参考文献を書きます。あ、ついでに付け加えますと、これらの文献についても隅々までしっかり丁寧に読んだものではありません。重ねてご無礼を謝罪し、重ねてご理解ください。すみません。

 《参考文献》
 〇『中島敦研究』(筑摩書房)
 〇『中島敦の文学』佐々木充(桜楓社)
 〇『中島敦論考』奥野政元(桜楓社)
 〇『中島敦の遍歴』勝又浩(筑摩書房)
 〇『中島敦――生誕100年、永遠に越境する文学』(道の手帖)
 〇『中島敦「山月記伝説」の真実』島内景二(文春新書)
 〇『狼疾正伝――中島敦の文学と生涯』川村湊(河出書房新社)

 では、始めます。
 まず私が興味を持ったのは、「山月記」の「種本」についてでした。それについて何冊か文献を読んでまとめますと、けっこう詳しいことがわかります。そもそも「人虎伝」には2系列あるそうですが、箇条書きでまとめてみました。

(1)大正9年12月刊行『国訳漢文大成』中の「人虎伝」
  原文は、唐代の説話集『唐人説會』収録の「人虎伝」(撰者・李景亮)
  ポイント→
   〇「山月記」に含まれた漢詩があります。
   〇虎になった理由が、人妻横恋慕の上放火殺人となっています。
   〇後述今東光の翻訳の原作。
   〇「山月記」の種本。
(2)『宣室志』収録「人虎伝」、その後『太平広記』に収録。
  ポイント→
   〇「山月記」に含まれた漢詩がありません。
   〇人妻の挿話なく変身原因は「狂気」
   〇後述佐藤春夫作品の種本。

 実は「人虎伝」は、そのころすでに読書家の中ではかなり有名な作品であったようです。(人間が虎になるという説話は、中国以外にもタイなどアジア一帯に広く見いだされるようです。)中島以前に作品化したものがいくつかあります。

(1)今東光による翻訳→大正15年9月『支那文学大観』
            第八巻に「人虎伝」翻訳。
  ポイント→
   〇漢詩あり。
   〇原文にない「夢」の話が何回か用いられている。→
       これはそのまま「山月記」に出てくる。
       (「夢にちがいない」「風流人士の…夢にだよ」)
(2)詩人田中克己の随筆「虎」(昭和12年10月『コギト』掲載)
  ポイント→
   〇『国訳漢文大成』の「人虎伝」に触れ、「化虎」の話は中国文学に
    多いこと、その源流が「人虎伝」であることを説く。
    (多くの作品は、「山月記」と異なり再び人間に戻る話である。)
   〇「虎」は「盗賊」のロマンティックな比喩であると解釈している。
(3)佐藤春夫による翻案作品「親友が虎になっていた話」(昭和16年)
  ポイント→
   〇『国民五年生』掲載の少年少女用作品。
   〇虎になることを山賊の頭などになることと解釈している。
   〇立身した友が堕落した友と出会う友情の話がテーマ。
     (「山月記」は友との「再会」でなく「別離」が主眼。)
   〇「山月記」成立は昭和16年6月頃と推定され、
    中島が読んでいる可能性は高い。
    (中島の大学卒論は「耽美派の研究」で、佐藤にも触れている。)

 どうですか。結構いろんな事情があることがわかりますね。学問の楽しさって、こんなところにもあるんですよね。

 次回、ちょっと教科書に寄り道をしてみたいと思います。続きます。


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Last updated  2020.04.05 10:55:53
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