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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2021.05.23
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  『姥ざかり』田辺聖子(新潮文庫)

 現在マイブームの老人文学であります。
 なぜ、老人文学がマイブームなのかは、最近の私の2種の拙ブログのあちこちにちょろちょろと書いています。
 でも、自分でも読んでいて、面白いのか面白くないのか、もひとつよくわかっていません。
 とにかくそんな一環での、さらに言えば、近代日本文学史上の老人文学の案内書に推薦されていた本書を、この度読んでみました。

 田辺聖子といえば、私のような関西に住んでいる人間にとっては、「お聖さん」というニックネームでとても親しみ深く、たぶん多くの人が、エッセイなどを何冊か読んでいると思います。
 ちょうど、佐藤愛子さんと双璧な感じですね。

 でも、私が自分で勝手に我が読書傾向として挙げている「純文学」ということで言えば、まー、ちょっとこの度の本は、違っているように思います。

 今挙げた佐藤愛子さんはかつて直木賞を受賞なさっていますが、田辺さんは芥川賞受賞であります。(言わずと知れた直木賞は大衆小説作品、芥川賞は純文学作品対象であります。)

 これはちょっとウィキで調べたのですが、佐藤愛子は、直木賞を取る前に2回芥川賞候補になっており、田辺聖子は、直木賞の方が欲しかったといって、直木賞の選考委員もしていました。(芥川賞を取って直木賞の選考委員をしていた方って、他にいるんでしょうかね。逆の人は何人かいるようですけれど。)
 なかなか、世の中は複雑なものなんですね。

 で、とにかく本書は、老人文学ではあるものの、やや「軽い」読み物である、と。
 どんな内容の読み物か、解説を書いている鴨居羊子がきれいにまとめてくれています。

 主人公の七十六歳の歌子さんは船場で、思い切り働いて、いまは悠々自適の楽しくも忙しい遊びの日々を送っている。
 その歌子さんの三人の息子とその嫁とそれぞれの子供――つまり孫たち。そして歌子さんの習いごと教室の友人達――といった彼女をとりまく人々との間におきる諸々の事件の中で、彼女の断乎とした人生観、主張、憤り、喜びが一頁ごとにくりひろげられる。

 上手にまとめてありますね。
 なるほど、一定の年配読者であれば(もちろん私もその一人ですが)何だか面白そうなお話だと思うでしょうね。
 いえ、実際面白いのであります。
 例えば、上記の「彼女の断乎とした人生観、主張、憤り」の部分について、本書には広くいっぱい描かれているのですが、一つ挙げればこんな感じ。

 親が甘すぎるというのだ。
 結婚する若者は、シッカリした根性と、気働き、それに苦労をいとわぬ健康、腰のかるさがあればいい。それに双方惚れ合っていればなおいいが、ま、一番大事なのは「やる気」であろう。

 こんな「主張」が結構そこら中に書かれていて、それはそれで楽しく、ただ、物語としての軽さを、実はこんな主張が生んでいるように思います。
 しかし筆者の巧妙な所は、こんな主張を心中に抱かせながら、主人公には、目の前の相手に向かってそれをしゃべらせていないところであります。

 ここには、作品としての品格とそして諦念の思想があるように、私は思います。
 それがより強く表れたエピソードが、例えばこれです。

 かつての会社の部下であった女性がやってきて、彼女も60歳を迎え、主人公にいろんな愚痴をこぼす、そんな場面です。

「長生きなんかして、楽しいことはちっともないんですもの」
 うるさい奴だ。
 私は半分身内だと思うから、フンフンときいてやっていたが、しまいに腹が立ってくる。
「あたし、一生けんめい働いて、操を守って、チャンとしてきました。それなのに、この頃、すべて空しイて……。長生きしても何で楽しいのでしょう、長寿を祝うなんてウソや思います」
 なんにも知らんな。
 長生きなんて、元々、楽しくないものだ。古馴染みの死んでゆくのを見るのが長生きということだ。

 どうですか。
 このあたりの展開は、これをエピソードの描写として広げていけば純文学的なものになるように思います。
 でも、そんなところに未練を持たず、「直木賞が欲しかった」とからりという「お聖さん」は、一級の物語の書き手であったのでしょう。


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Last updated  2021.05.23 11:02:32
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