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analog純文

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2022.08.27
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『俳句と人間』長谷川櫂(岩波新書)

 本書の中に、東京電力福島原発事故についての短歌と俳句があります。一つずつ引用してみます。

  人々の嘆きみちみつるみちのくを心してゆけ桜前線
  何もかも奪はれてゐる桜かな

 いかがですか。現在『震災歌集震災句集』として出版されているそうです。
 さすがに、どちらの作品も甲乙つけがたく素晴らしいという感想を持ちますね。
 と、同時にこうして同様のモチーフを二種類の形式で描いた作品を読んでいますと、その二種類の形式の違いが、いかにも際立ってくるような気がします。

 私は引用に当たって、「福島原発事故についての」と書きました。事実その通りなので作品を鑑賞する方向性としては特に問題ないと思います。
 つまり、われわれはこの二つの作品を鑑賞するに当たって、「福島原発事故」という実際に起こった事故の様々な(読者によってかなり質量共に違いの大きな)情報を前提に読む、そして、感動する、と。

 ただ、じっとこうにらんでいると、自分の中で、二作品の作品からの感動に至るルートが、何というか、かなり違っていることに気がつきます。
 ……んー、どうも説明が難しいので、ざっくり既成の言葉で書いてしまいます。
 俳句は、非情だな、と。

 さて、なぜこんな話から入ってしまったのか、我ながらよくわからないなりに、本書を読んだ思いがけない感想として、筆者が現代俳壇を代表する俳人のひとりでいらっしゃるくらいのことは私も知っていますが、筆者のものの捉え方は(少なくとも本書においては)、俳句的と言うより短歌的な気がかなりした、と言うことであります。
 かなり情緒的な感じがしました。

 なぜそうなのか。
 もちろん筆者の文学観が底辺にあるのだろうとは思いつつ、やはり「はじめに」で最初に触れてある、筆者に皮膚癌が見つかったという執筆状況が関わっているのでありましょうか。

 少し話は飛びますが、私は図書館で本書を見つけました。
 で、借りて読んだのですが、タイトルから想像した内容とはかなり異なっていました。(それを一概に批判しているわけではありませんが。)
 一言で言えば、本書は「死」を核とした人生論(現代社会批判をかなり含む)でありましょう。

 例えば前半部に「死という漢字が伝わる以前の日本人は死を知らなかったことになる」と述べて、このように書いてあります。

 ​漢字の死に相当する大和言葉には「なくなる」「ゆく」「みまかる」がある。しかしこれらの大和言葉には漢字の死にある厳粛な断絶の響きがない。あくまである場所から別の場所へのゆるやかな移動である。つまり古代の日本人は漢字の死のようには死ななかった。​

 一方本書の終盤で、筆者は松尾芭蕉の晩年の描きます。(多分本書中最も興味深いところです。)
 『おくのほそ道』は単なる旅の記録、紀行文ではないと書く筆者はさらにこのように述べています。

 ​『おくのほそ道』には「かるみ」の「か」の字も出てこない。しかしながら簡潔にいえば「かるみ」とは悲しみや苦しみに満ちた人生を、ベネターの言葉を借りれば害悪でしかない人間という存在を、宇宙的な高みに立って俯瞰するということではないだろうか。​

 さらにこの後筆者は、芭蕉晩年の苦悩は、この人生観だった「かるみ」を俳句に応用しようとして徹しきれなかったことから生じたと展開していくのですが、そこに印象的な説明部があります。

 ​人は生きていれば必ずいつか死ぬ。たとえそれが自分であれ家族であれ、また戦争や大地震で何千人何万人死のうが、何を騒ぐことがあろうか。阿弥陀如来のように微笑みを浮かべて眺めていればいい。これが「かるみ」である。「かるみ」とは恐るべき非情の精神なのだ。​

 繰り返しますが、芭蕉はこの「かるみ」に徹しきれなかったわけですね。
 さて冒頭に私が触れた「筆者のものの捉え方は」という話に、これをつないでいくというのは、……いえ、きっと我田引水の極みであるのでしょうねえ……。

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Last updated  2022.08.27 20:58:27
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