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近代日本文学史メジャーのマイナー

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analog純文

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2023.11.19
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  『俺の自叙伝』大泉黒石(岩波文庫)

 さて、大泉黒石であります。
 って、果たしてどれほどの方がこの名前をご存じでいらっしゃったでしょう。
 自慢ではありませんが、もちろんわたくしも全く存じ上げませんでした。

 と、いうより、岩波文庫、ちょっと、やりすぎでないかい。
 いえ、本来私は岩波文庫の出版基準については、大いに一目も二目も置いており、さすが日本文学の老舗出版社と「リスペクト」致しております。

 本当にその敬愛と尊敬はかなり以前からなのですが、特にさすがだなあと思ったのは、上司小剣の作品集を読んだ時で、この時は岩波文庫の目の高さに、まさにひれ伏すような感覚でありました。

 で、この度の大泉黒石でありますが、いえ、日本文学の研究者の方ならご存じの作家なのかもしれませんが、例えば高校レベルの文学史の教科書なんかには、まったく出てきません。(それは上司小剣も同じですが。)

 わたくし、気になったのでちょっと調べてみました。
 まず学燈社の『日本文学全史』の第5巻「近代」の索引を見てみましたが、大泉黒石の名前はありません。(ついでに第6巻「現代」も見ましたがありません。)


 次に新潮社の『日本文学小辞典』に当たってみたら、さすがにありました。
 ただ、3段組みの本文体裁ですが、そのわずか10行だけであります。(これもついでに上司小剣を調べたら、3段組み丸々1ページ以上の記載がありましたよ!)

 そこで、冒頭に私が書きました「ちょっと、やりすぎでないかい」でありますが、しかし、わたくしもう一度考えたんですね。
 つまり、本来このような作家の作品こそが、わたくしがこの拙ブログで取り上げようと考えていたものではなかったか、と。

 思い起こせば、ぼそぼそと10年以上も本ブログを発信してきて、いつのまにかなんでありーになっていますが、(一応「純文学作家」というのを微妙に守っているような、破っているような……)最初に私が考えた、本ブログで取り上げる作品・作家の基準はこうでした。

 1.メジャー作家の、相対的マイナー作品。
 2.メジャー作家の中の、相対的マイナー作家の作品。

 (2番の注釈を入れますと、日本文学史の中に名前が残るというだけで、その作家はすでに「メジャー作家」であると前提し、その中の「相対的マイナー作家」という基準ですね。)

 この基準に照ら合わせますと、この大泉氏なんかはまさに、ど真ん中のストライクであります。
 ということもあれこれ考えつつ、私は本書を読み始めたのでありますがー……。

 しかし考えれば、「自叙伝」というジャンルについて、今までわたくしあまり読んできませんでしたし、またあまり好みでもありません。
 小学校のころ読んだりする『ナイチンゲール伝』とか『野口英世伝』とかも、あまり面白くなく、ルパンかドリトル先生のほうを好んでいました。(しかし、伝記文学というジャンルは、特に世界文学の中では優れたジャンルのものであるというのは、何かで読んだ気はしますが。)

 もっとも、日本文学は、「自叙伝」と銘打たないだけで、「私小説」なんかはよく似た内容のものだという気はしますが。

 ともあれ、読んでみました。
 ……長い。380ページ余りあります。
 それが4つの章に分かれているんですね。章題をちょっと書き出してみます。

  「少年時代」「青年時代」「労働者時代」「文士開業時代」

 この第1章の「少年時代」が筆者のほぼデビュー作で、これが雑誌「中央公論」で評判になったそうです。そして、2編3編と書き継ぎ、それを書いている現時点あたりを第4章で書いて終わっているという形式であります。
 そしてこの執筆当時は、売れっ子のベストセラー作家であったそうです。

 なるほど、読んでいて、後の章になるほど、どんどん面白くなってきています。
 第4章などは、それだけでまとまった作品になっています。というより、この第4章は「自叙伝」の形ではなくて、亡くなった祖母の遺骨を持って故郷長崎に行くという一つのエピソードだけが描かれています。(面白いです。)

 そんなお話でした。
 で、読み終えて、わたくし的に感動したとか、ああー、面白かった、となったかというと、そこが少し当て外れでありました。(だから冒頭の「やりすぎ」うんぬんが出てきたんですね。)

 ただ、初出当時本作が大いに読まれたということについては、納得するところがありました。それは、主人公の人物(「俺」で、一応作者自身ということになっています)の性格設定が、とても魅力的であるからです。
 それは例えば、同じく「俺」の一人称小説、漱石の『坊ちゃん』を並べて挙げてみるとよくわかると思います。主人公の性格に、適度な世間知のなさや愚かさがあり、そしてそれ以上の純粋さ、一本気さがあります。

 ここに至り、私は、はっと気が付いたんですね。
 あ、そういうことか、と。
 それはつまり、そういった魅力を持つ主人公は、必ずや時代を超えて読者に愛されるはずであるということを、岩波書店の文庫担当の方々が、……なるほど、狙ったのか―、と。

 ……うーん、穿った経営戦略でありますねー。
 (私のこの推理のほうが、もっと穿ってますかね?)


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Last updated  2023.11.19 08:32:31
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