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2024.07.27
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『注文の多い料理店』宮沢賢治(角川文庫)

 宮沢賢治がすごい、というのは、本当にもういーーっぱいの方が述べています。
 すでに賢治は文学の領域を飛び越えて、ひとつの産業、登録商標、エンタメ業界、(「金の成る木」)になっている気がして、私のような小人物は、触れるのが怖くはあるのですが、先日から何回かに分けて、地域の公民館で「『注文の多い料理店』を読む」という地域文化セミナーをしていました。

 私は、「怖いもの見たさ」もあって、とりあえず第一回目の講座に参加したところ、講師の先生の「賢治愛」がとても半端ではなく、かつそれに変な嫌味や押しつけなどもなく、熱気あふれるままに講義をなされたので、私はとても好感を持ち、結局全6回のセミナーに参加しました。

 で、そんな賢治がらみのとても面白い話とか、知らなかった話をたくさん聞いて、また、ぜひぜひこの童話あの詩を読んでくださいとかも言われて、改めてこの度、宮沢賢治『注文の多い料理店』を読みなおしましたが、……うーん、ちょっと、困っています。

 あれだけ賢治=天才、って言われたのですから、今更それを否定する気は毛頭ありませんが、私としては、どうもきちっと腑に落ちる感じのもの=実感に欠けるんですね。
 でもこれって、ちょっと困りません?

 だってみんながすごい凄いといっている人について、そのすごさが実感できないというのは、どう考えても私に、それを判断するとか享受するとか鑑賞する能力が欠けてるとしか言いようがないですわね。

 ……えー、そんな私が以下、書いてみます。
 ものの良しあしの分からん奴の文章です。そのつもりでお読みください。

 上記に凄さが実感できないと書きましたが、ひとつだけは、圧倒的に賢治凄いと私でも納得できることがあります。
 それは、独創性、ですね。

 賢治の前に賢治なく、賢治の後に賢治なし。この空前絶後のオリジナリティは、天才的といえば、なるほど天才的であります。(それだけでもう、天才だと評価するには十分じゃないかと言われれば、なるほど、そんな気もしますが。)
 全く、こんな話、賢治以外には書かないだろー、という作品だらけです。

 ではそのオリジナリティーの質といいますか、正体はどのようなものかと、今回わたくし考えてみましたら、ふと気が付いたことがありました。
 それは、わけの分からないことを書き続ける独創的才能ではないか、と。

 これもきっと、私がどこかでそれらしいことを読んだのだと思いますが、わけの分からないことを書き続けることって、けっこう、というよりかなり、大変そうであります。

 作家や画家や音楽家などが、わけは分からないが凄いというものをなんとか生み出そうとして、日々身を切るように苦闘し続けたという話は、古今東西多くの例がありそうです。

 では、賢治のその方法は?
 それは、実は本誌の賢治の序文に書かれてありますね。有名な部分です。

 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。
 (略)ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、そのとおり書いたまでです。
 (略)なんのことだが、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

 わたくし、ここには二つのことが宣言されていると思いました。
 一つ目は、私(賢治)は、自然の思いを人間の言葉に翻訳しただけのものを預かった者=預言者である、ということ。
 二つ目は、私(賢治)は人間的理性や分析ではなく、自然に対する絶対的信頼と愛情に則って物語を書くのである、ということ。

 賢治の文章の大きな特徴として言われる気象学的・鉱物的・天文的表現(恐ろしく透明感のある表現)というのも、その正体は自然の理解分析というよりは写生=自然のトレースのようなものでありましょう。

 賢治の童話だけに限らず、考えれば、わけの分からないことには大いに魅力があります。
 そもそも人類の歴史とは、それを求め続けた行為だともいえそうですが、そんな大層な話でなくても、子供の遊びのなぞなぞや大人の薀蓄話など、謎を知ること、そしてその正体を知りたいと思うことは、心の動きそのものがとても快感であります。

 冒頭のセミナーで、これは本筋の話ではなかったですが、賢治の童話の「やまなし」に出てくる「クランポン」の正体に触れた(もちろんたくさんある説のうちの一説ですが)ことをおっしゃいましたが、私は聞いていてびっくりするとともに、ちょっと鳥肌が立ちました。

 (ここでその説を述べていいものか少し迷いますが、多分その研究者はすでにどこかで発表済みでしょうから、ざっくりとだけ「謎解き」結果を書いてみますね。二つ驚いた「謎解き」があるんですが、ひとつめ「クランポン」とは亡くなった子蟹たちの母親である。二つ目、そもそもの子蟹たちのいる水中は、母親の羊水の中である。……びっくりしませんか?)

 結局のところ、「わけの分からないこと」を書き続けることのできた賢治のオリジナリティとは、こういう事ではないかと、わたくしこの度、思ったのではありますが、そういえば、現代日本文学の作家の中にもう一人、「わけの分からないこと」を書き続ける作家がいるぞと、わたくし、ふっと気が付きました。
 併せて、やっぱり彼もすごい人気作家であるぞ、と思いました。

 お気づきになられたでしょうか。
 このように考えますと、全く、わけのわからないものの力は実に強力強大であります。
 (そうか、『本当は怖い〇〇』なんて本も、その類だな。)

 あ、その作家の名前は、たぶんもう言うまでもないと思いますが、村上春樹。……。

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Last updated  2024.07.27 08:06:27
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