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テーマ:中国&台湾(3303)
カテゴリ:中国駐在お仕事
ジョーの契約更新を打ち切り。
一番恐れていたのは、ジョーの逆恨み。 現場を破壊しやしないだろうか? 在庫データを消去しないだろうか? 役人連れて「不当解雇だ」と会社に乗り込まないだろうか? 緊張の引継ぎ期間がすぎて、 「アコ小姐」と後ろから声をかけられて振り向くと ジョーが立っていた。 両手に ■ノギス(長さや厚みを測定するモノサシの一種) ■シャーペン2本 ■シャーペンの芯 1ケース(半分入っている) ■ボールペン2本 ■巻尺 ■定規 ■バインダー 数冊 ■メモ用紙の台 ■消しゴム 2個 を抱えて。 私 「あ・・・」 焦 「今日までですから」 私 「そっか・・・」 焦 「どうぞ」 と両手で抱えた道具を差し出す。 私 「はい。・・・随分・・・。ぜ~んぶ返すのね(驚)」 焦 「はい」 私 「この消しゴムなんて、すごい小さい。小指の先くらいの・・・こんな丁寧に^^;」 ジョーは何も言わずに微笑んでいた。 私 「謝謝。・・・辛苦了(お疲れ様)。」 頭を下げて、荷物を受け取った。 焦 「アコ小姐」 ジョーが微笑みながら手を差し出した。 私は椅子から立ち上がって、手を出した。 お互いに目を真っ直ぐに見つめて、強く握った。 ジョーは竹山さんや同僚達とも握手をして、そして 会社を去った。 心配していた逆恨みも何もなく、さあっと風が抜けたように いなくなった。 宋さんが後日、私に小声で言った。 「ジョーはクビになった日、大川さんに泣きながら電話をしたらしい」 公衆電話で、大川さんに国際電話をかけるジョーの姿が目に浮かんで 何とも切ない思いがした。。 *************************************** ジョーがいなくなった後、宋さんと竹山さんを中心に人事を行い、 今まで地味な作業をしていた者が倉庫管理になったり、 生産管理の仕事範囲が少なくなったりと、 大幅な組織変更があった。 これで落ち着いて仕事できる・・・ 宋さんは大川さんと違って実務をよく分かっているし、 竹山さんだって、大川さんに抑えられていた部分が取れて 自分らしい仕事が出来るだろう・・・ ・・・そう思っていた。 ある日、 運転手の王さんが車の中で私に言った。 「アコ小姐・・・」 「はい?」 「宋さんと生産管理が、とっても仲がいいって知ってるかい?」 「新しく出入りしている運送屋は、倉庫管理の父親だって知ってるかい?」 「宋さんと竹山さんが、一部の管理者達と『誕生日会』をしているのを知ってるかい?」 表情が変わったのが、自分でも分かった。 「・・・知らないよ、そんな事・・・」 すぐに竹山さんを問い詰めた。 竹山さんは、下を向きながらゴニョゴニョと認めた。 「何やってるんですかっっ!!」 怒鳴りつけた。 大川さんで、ジョーで、あれだけ懲りたんじゃないんですか・・・!! 何で同じ事をやってるのっっ・・・!! 全部、本社に報告した。 経理部長から宋さんと竹山さんは厳重注意を受けた。 その後も絶えず誰かから入ってくる情報は、裏を取った上で全て本社へ報告し続けた。 自分が本社のスパイのように思えた。 とても卑怯な事をしているように思った。 別に宋さんが嫌いなわけでも、竹山さんに意地悪しているわけでもない。 しかし結果的に、宋さんは管理の権限を減らされ、 竹山さんは降格になり、私が江蘇を去った1年後には、解雇されたと聞いた。 ************************************ 多くの取引先が中国に進出したから、江蘇に会社を興した、と。 会社や社員に対中の知識やノウハウはなく、とにかく進出した、と。 責任者に、生産のベテランの大川さんを派遣し、 サポートとして数部門経験した事のある竹山さんを派遣した。 本社は大川さんを頼りに全権を委任した。 …ちょっと待って。 ・・・会社経営って、工場経営って、そんなに簡単なのか? 一介のサラリーマンが全てを采配できるほど簡単なのか? ましてや中国のような、ややこしい国で。 言葉も分からず。 知識もなく。 経営などできるはずもない能力の人間を、キチンと評価もせず 懇意だからと責任を与え、権限を与え。 会社に損失が出るのは当然ではないの? 冷静に考えれば読める結果。 何の為に仕事しているの? 会社に貢献する為ではないの? 気が合うからと周りをイエスマンで固め、私心を優先し、会社にツケを回す。 情 理 法 感情(人情)・道理・法律(規則) 情が優先しては、組織なんて成り立たない。 江蘇の会社には「法」はなかった、本社にも「法」はなかった。 あっても遵守していなかった。 裏金作りをしていた地方団体。 解雇された元職員の言葉。 「上司から、やれと言われた。 組織だから、やるべきと判断してやった」 情理に適っている。 組織に所属する者が、 上司から言われれば断りにくい。 裏金作りも仕方なく・・・ しかし、この言葉に法はない。 法なき管理は組織を破壊する。 大川さんが原因だと思った。 ジョーを除けば問題が解決すると思った。 でも、そうではなかった。 情を優先する組織では、大川さんは、また現れる。 ジョーも、また現れる。 大川さん、そしてジョー・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 私には、彼らが 会社が作った徒花(あだばな)に思えてなりません。 終わり。 全6回。読んで下さった方々、有難うございました。 ←よろしくお願いします(別窓) ←こちらも是非(別窓) ←これも、いいでしょうか?(別窓) この話は 【五】駄目駄目ジョー の続きです。宜しければどうぞ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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