|
カテゴリ:おじさん
以前、近所の焼き鳥屋に行った時のこと。
当時いい感じだった人と行った、本気の炭火焼き鳥屋。 「安くて美味い」店だったので、二人の間ではよく利用していた。 ある日、世間話をしながら焼き鳥をついばんでいると、隣のおっさんに不意に話しかけられた。私にとって、知らない人に話しかけられること(特にカウンター形式の店)は、珍しいことではない。 なぜか話しかけられん坊の星もしょっているので、この日もいつもどおり、当たり障りのない返事をした。 「お二人は、アパレル関係ですか?」 自信満々におっさんが言った。 「おしゃれですね」と言われたような気がして(自意識過剰か?!)悪い気はしない。 しかし当時、私たちは広告関係に勤めていたため、残念ながらハズレである。 続けて 「ちょっと、この二人にこれ出してあげて」 おっさんが、自分の皿を指さして言った。 「ここの店は、これが一番美味いねんで。でも、メニューにないもんやからな。おっちゃんしか知らんねんで」 「ありがとうございます」 おっさんしか知らない、幻のメニューは、何かにベーコンが巻いてある串だったと思う。 しかし、特に印象に残っていないところをみると、さほど「特別感」はなかったのだろう。 しばらく3人で、話が弾むこととなった。 おっさんは話し相手が欲しかったらしく、何だかずっとしゃべりっぱなしである。面白かったので、そのまま聞き続けていたら、カバンから何やらゴソゴソ出してきた。 「これ、おっちゃんが書いたんや。プレゼントするわ」 ポストカードを3枚くれた。 おっさん直筆と思われるそれは、淡い水彩タッチのやさしい絵だった。 「またの機会にお会いできることを。せっかくのデートをお邪魔してすいませんでしたね」 最後はなぜか、礼儀正しく去って行った。 私たちは、もらった絵葉書を手に 「これ、どうしたらいいんでしょう…」 と苦笑いした。 そのときの彼とは、もう何年も会っていないが、この絵葉書は、今でも私の手元にある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[おじさん] カテゴリの最新記事
|
|