また母である。

彼女は私が最も羨む「天然」素材だ。それも「超」がつくほどの。
いつでも、と～れとれ、ピ～チピチの新鮮素材。業界関係者などからネタに困れば母を見ろと噂されそうな逸材である。

そんな母が、ここ数年、ひどく腹を立てている人物が存在する。
彼女は、その人物が話題に上るたび、フレッシュに怒りを露わにし、
「こいつさえ、いなければ！」
などと、口汚く罵ったりする。


ずばり金正日！

全く、彼女の正義感は世界レベル、天井知らずとは、まさにこのことである。
以前、小泉君が金正日と会談している場面を見ているときのことである。
「私、この人殺せるかも」
決して誰にも聞かれてはいけない、衝撃発言だ。
「こいつのせいで、世界がおかしくなってるねん」
もう彼女の思想は止められない。
金正日暗殺の大役を、神戸の一主婦が担うというのは、並々ならぬ決意のもとである。

しかし、彼女の正義感が、本当の意味で世界レベルだったことは、数日後の、さらなる衝撃発言に裏打ちされている。

映画「グリーンマイル（死刑囚を扱った作品）」の話になったときだ。
私：「じゃ～さ～、もし私のこと殺した犯人に会ったらどうする？」
母：「ん～、死刑のボタンは押されへんな～」

なんで？
金正日は抹殺できるのに、実の娘殺した犯人の処刑が執行できないのか？

まさに世界レベル！
ワールドクラス！！
大きすぎる価値観を持つ正義感！！

わが母を誇りに思う。