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カテゴリ:おじさん
そこは、おじさんが一人で営む、街の洋食屋である。
厨房を囲むカウンターと、小さなテーブル数席の小さな店だが、すべてをおじさん一人で行うには、大きすぎる。 まず、ここは「料理を作る」以外のことは、ほとんどお客でしなくてはならない。 お水を自分たちでいれるのはもちろん、オーダーも手元にある伝票に自分で書き込む。 「あ~、ナスのグラタンは、時間がかかるから、もうオーブンに入れておいたで」 まだ、ナスのグラタンを頼むと決めていないうちからの、フライング攻撃である。仕方がないので、伝票に「ナスのグラタン」と書いた。 次にグレープフルーツジュースを頼んだ。 「あ、切れてるわ。ちょっと買ってくるから、ここ見ておいて」 そういい残すと、おじさんは疾風のように店を飛び出し、すぐに缶ジュースを手に戻ってきた。 どうやら、近くの自販機で買ってきたらしい。 直接そのジュースを受け取った私は、それを自分でグラスに注いだ。 料理自体は、とてもおいしかった。 なので、店は繁盛している。 主に若い女の子たちで、次々と席が埋まる中、私たちは無駄口を叩かず、さっさと食事を済まさなければならない。 食事が終わると、食べ終わった皿は、そのまま重ねてカウンターに乗せておく。そうするとおじさんは、おもむろに言い放つ。 「混んできたから、食べたら早く帰ってや」 私たちは、おじさんの言うとおり、さっさと清算を済ませ、こう言うのである。 「おいしかった! おっちゃんまた来るわ!!」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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