|
カテゴリ:お兄さん
よだれを垂らしながら歩いている人を見た。
この場合、「垂らす」の表現に誤解があっては、奇怪さが伝わりにくいので、詳細に記す。 赤ちゃんみたいに、口の端から「チロッ」と液体を垂らしているのではない。 前かがみになり、タラ~っと滴り落ちる感じで、よだれを垂れ流している図をイメージして頂きたい。 酔っ払いのようにフラフラした足取りで、ダラダラと液体をこぼしながら歩いているのを見つけたとき、 近くには寄れないが、観察しなければ の気持ちが働き、野良猫のように、一定距離を保ちながら尾けてみた。 衣装コンセプトは「マトリックス」だ。 全身黒でまとまっており、顔のサイズより明らかにデカイ「ダイモン(太陽にほえろ!より)」のサングラスをかけている。 ←これがダイモンモデル? 不規則に歩行者に近寄り、唾液を垂らしながら歩くので、あちこちで「ひゃっ」と悲鳴があがる。 私も捕まるのは嫌なので、彼の視線に入らないよう、右斜め後ろから追跡を続けたが、これといった変化もないので(友達と待ち合わせしていたこともあり)ある程度のところで尾行は中止した。 しかし本当にびっくりするのは、これからである。 「さっき、唾吐きながら歩いてるマトリックス見てん」 と言った私に 「そいつと昼間30分くらい、二人っきりの空間におってんけど」 と友達は言った。 1唾を吐きながら歩く 2マトリックスの衣装 この、たった二つのキーワードで、彼女は私が見た人物と、自分が接触した奇人が同一人物だと見抜いた。 前職のテナントビルの同僚だった彼女は、館内ポスターの張替えを行っていたらしい。そのとき、ひと気のないフロアのポスターを張替え中に、そいつがずっと近くにいたらしいのだ。 「前に公衆電話蹴ってた奴やで」 そう、私がそのテナントビルに勤めていた頃、ほとんど人が通らないフロアの通路に設置してあった公衆電話に、いつもいる不審者がいた。 彼は受話器に向かって、ずっと何か話しているが、電話がつながっていた例はない。いつも足元を蹴っていたので、壁が黒くなっていた。 不審中の不審、直球ど真ん中で不審だが、何か具体的な害を加えるわけではないので、こちらとしても何もできず放置されている人物がいた。 私は実害をこうむった事がなかったが、この友達は、一度この人物に脅されたことがある。 エレベーターに乗ろうとしたら、突然そいつが近寄ってきて 「毒殺、毒殺!」 と言われたらしい。 不審者も出るし、利用者も少ないことから、この公衆電話は私がこの職場を去る頃、撤去された。 行き場を失った彼は、しばらく出没していなかったが、最近になって最上階の奥まった場所にある公衆電話に、再び現れるようになっていたらしいのだ。 偶然見かけた不審者が、実は何年も前から知っていた人物で、さらに待ち合わせしていた友達が、昼間そいつと長時間対峙していたなんて… 「世間って狭いな~」なんて、わりと間違った感想を抱いた私である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[お兄さん] カテゴリの最新記事
|
|