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カテゴリ:BOOK
川上弘美著
<本文より> ニシノ君とのキスは、さみしかった。今まで知ったどんなさみしい瞬間よりも。 女には一も二もなく優しい。姿よしセックスよし。もちろんモテる。 女に関して懲りることを知らない。だけど最後には必ずフラレてしまう…。 とめどないこの世に、真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。 はてしなく、しょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる…。 私、本を読んだり映画を観たりすると、わりとその世界に浸かってしまう。(逆に入り込めなかった作品に、駄作の烙印を押す)その世界の誰かに、思いっきり感情移入しまくってしまうのだ。 で、ニシノユキヒコ。 多分、私も好きになると思う。 この人に出会ってしまったら、きっとすごく好きになって、ずごく苦しくなるだろう。 でも、ニシノユキヒコは、きっと私を好きにならない。 いや、もしかしたら好きになってくれるかもしれない。 でも、好きでい続けてはくれないだろう。 そして、いつか私のことを好きじゃない彼を見つけてしまったとき、私はどうするだろう。 見てみぬフリをして一緒にい続けるか、それとも別れを決意するか…。 ……気づかないフリをして、ずっと一緒にいようとするかもしれない。 でも、ニシノユキヒコは優しいのだ。 きっと、いつのまにか、私が「自分の意思で離れよう」と決意できるように、少し自分を傷つけて、優しく別れてくれるに違いない。 妄想癖が強く、想像力が豊かな私は、この本を読んでいる時間、確実にニシノユキヒコに恋をしていた。 何だか嬉しい気持ちになったり、悲しい気持ちになったり、登場人物の女の子達に嫉妬したり…。 そういう世界が作れる作家、川上弘美という人は、本当にすごいと思う。 今、私が一番好きな作家である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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