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カテゴリ:おじさん
高校時代の数学の先生に「ありりん」というあだ名のおじいちゃんがいた。
小柄なおじいちゃんで、茶色い色眼鏡を掛けていたありりんは、あえて誤解を恐れずに言うなら、とても授業が下手だった。 彼は「数学β」という教科の担任であった。 ただでさえ、数学がちんぷんかんぷんの私にとって、ありりんの授業はその傾向に拍車を掛ける、まさに負のスパイラルな存在であった。 ★授業風景一例★ 「アンセ、この問題解いてみろ」 「…わかりません」 「もう一回、問題読んでみろ」 「…(黙読する私)…わかりません」 「今度は声出して読んでみろ」 「…xが○○のとき、yが○○で…云々……わかりません」 「三回問題読んで分からんやつはバカだ」 こんな感じ。 でも、なぜか憎めないありりん。 高校3年のとき、彼は定年の年を迎えた。 最後の期末テスト、私は頑張った。 ありりんのことが好きだったので、最後のテストぐらいはいい点を取ろうと思ったのだ。 そして、本当にいい点を取った。 数学β至上、最高点! そして、そう思っていたのは私だけではなかった。 クラスみんながいい点を取り、数学β至上最高平均点となったのだ。 そして、ありりんの教師生活最後の授業の日、まさに最後の授業が偶然、私のクラスになった。 私達はありりんに内緒で花束を用意していた。 授業後、花束を渡したとき、ありりんはすごくビックリしていた。 そして小さな声で言った。 「下手な授業聞いてくれてありがとう」 ありりんは、涙を浮かべて、でもそれを見せまいと、ものすごく早足で教室を去っていった。 私も思わず涙ぐんでしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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