スリを撃退するの巻
何度も言ってるように、私は人を見るのが好きだ。特に電車の中は、観察対象が溢れ返っているので、読書好きの私(ちなみに一種の活字中毒のため、かばんにはいつも文庫本が入っている)としては、「本を読むか、誰かを観察するか、それが問題だ」と、ハムレット的状況に立たされる(勝手になってろ! って今思った?)こともしばしばである。数年前、スリを撃退したことがある。しかも、一言も声を発さず、手を上げることもなくだ。夜の電車は、泥酔しているサラリーマンの宝庫である。寝すぎて、座席から転がり落ちた人を見たのも、一度や二度の話ではない。いつだったか、眠って「ガクンッ!」ってなった拍子に携帯を落とし、それを壊してしまったサラリーマンがいた。「あれ、壊れたんかな、あれ、動かへんで、あれ…」1人で「あれ?」を連発する「あれ星人」と化したお兄さんは、下車するまで、ずっと「あれ?」といい続けて携帯を触っていた。そう、スリの話である。その夜は、横並びの席の向かい側に、1人の泥酔しているおっさんが眠りこけていた。車内は空いている。と、そこに1人のおっさんが座った。空いているのに、わざわざその泥酔オヤジの隣にだ。私はそのおっさんを凝視した。いつもとは違う見方だ。チラ見ではない。凝視!!何かしたら、ずぐ告げ口しますからね、という強い視線を彼に送り続けた。おっさんは、席を立った。勝った…もしかしたら、隣の車両で別の人が、おっさんの餌食になったかもしれない。でも、とりあえず、目の前で行われようとしていた犯罪は未然に防いだ。←自分で自分の身を守る人はクリック♪私はなんとも言えない満足感に浸った。1人でヒーロー気取りだ。しかし、救ってやったはずのおっさんは、何があったのかも知らないまま、眠り続けている。そういえば、終電だったけど、ちゃんとあの人帰れたのかな…。