梅木水晶の日常

男は、私が仕事に行っている間、
各種雑用で一人で外出する事が度々あったようなのですが、
男が一人でいる時に限って、嫌な事が起こるそうなのです。

男が一人で横断歩道を歩いていると、
車にひかれそうになったり、
コンビニでコピーの順番を立って待っていると、
後ろから変な親子に因縁をつけられたり、
コンビニでコピーをしていると、
何をコピーしているのか客・及び店員に執拗に覗き込まれたり、
コンビニで立ち読みをしようとすると、
立ち読みをしている男性客全員が幅寄せをするようにして、
男の立つ場所を誰も開けてくれなかったり、
男が「失礼します」と言ってから雑誌を手に取ろうとすると、
皆、一斉に男の顔を見て舌打ちをしたり、
コンビニで漫画原稿の発送依頼をすると、
店員が「お仕事は何をされてるんですか？」と
妙に馴れ馴れしく聞いてきたりするのだそうです。

一番酷いなと思ったのは、
男が、確定申告の時期に、
町役場に各種届出を出しに行ったら、
税務課の課長らしき男に、
男のあまりの所得の低さを鼻で笑われ、虫けら扱いされ、
男が持って行った書類を全て床にぶちまけられたという話です。
役場にいた職員の人間も、その状況を目の当たりにして、
皆、男の事を、虫けらを見るような目で見たと言うのです。

「どうせ僕なんか、水タンみたいに
　この町に税金をたくさん納めてるわけでもないし、
　この町にとって、僕はお荷物でしかないんでしょ！
　だからもう僕、あの町役場には行きたくないんだ！」との事。

私が、
「じゃあ私が『それは国民全体の奉仕者である公務員として、
　それ以前に人としておかしいんじゃないですか』 って言ってきてあげるよ。
　何もしてない犬ちゃんがそんな扱い受けるなんて
　どう考えてもおかしいよ！」 と言うと、
「そこは水タンの出る幕じゃないから！」との事。

正直私は、男の為にどうにかしようという事より、
男の言っている事が本当かどうかを確かめたかったのです。

一度だけ、私が男の代わりに毎月払っていた、
住民税だか保険料だかの振込用紙が届かなかったので、男と一緒に役場に行き、
「○月分からの振込用紙が届かないのですが…」と言いに行ったら、
「大変申し訳ございません」と言われ、
すぐに新しい振込用紙を用意して頂きました。

男に、
「町役場の皆さん、何もおかしな所なんかないじゃないの…」と言うと、
「だって水タンは、僕と違って、
　この町に税金をたくさん納めてる一流企業の会社員さんだもん。
　そりゃ役場の人の応対だって丁寧になるよ！
　どうせまた水タンは僕の言ってる事を嘘だと思ってるんでしょ！」との事。

というか、信じようがない。

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