深涙色 ―ふかなみだいろ― 【二】

October 22, 2007

…うそつき…

なんも考えないなんて、嘘でしょ…

帰りの電車の中で、私は、青ざめるムネを抱えて、メールを、打った。

『ごめんね。

　
　あとから、私、なんて無神経なんだろうって、思った。

　ホントは…何にも考えてないわけ…ないよね…

　私ね…　思うの…

　
　いっぱい考えたあと、裏切られたり、悲しいことが起きたりしたら、

　何にも考えたくなくなるもん…

　夏、そうだったから。私。

　考えたら、なんか…せつなくなるし、嫌な思い出でいっぱいになるもん…

　だって、コースケくんと話すたび思うよ。
　
　『いっぱいいろいろ考えてるんだね』って。

　でもたぶん、周りの人のこと・　自分のこと・いろいろ考えて、

　楽天家で何にも考えないフリしてるんじゃないのかなって、思った。』

…やばい。

メール打ちながら、勝手に涙が出てきた。

ハンカチでぬぐっても、まばたきしても、涙がこぼれ落ちてくる。

それでも私は、メールを打つ指、止めなかった。…止められなかった。

『買い被りじゃないよ、

　コースケくん、優しいと思うよ…

　だって、優しい目ぇしてるもん。

　ホントに自分のことしか考えない人は、あんな目ぇしてないよ…

　いっぱいいろいろ考える人な気がするよ…カンだけど

　…だから…軽はずみなこと、言ってごめんね。

　ホントはそんなこと、心からは思ってないから！』

…何言っても、何を書いても、足りないよ、足りないよ…

もどかしさが、瞳から、どんどん涙になって、流れてく。

ちょっと太った、銀色の半月だけが、空で私を見てた。

ねぇ、カミサマ。

私もう、どーなってもいいから。

失恋しても、イイから。

だから、だから、謝りたい気持ちだけ…本当の気持ちだけ…

どうか、コースケくんに届けて…!!