…はーい電話来たぁ。



業務中。午後4時。

少し変わった音色の着信音は、

上4桁が決まった番号。

社員の常駐先の企業のひとつからの電話です。


しかも、すぐにピンときた。

ディスプレイ表示なんか見なくても、

なぜかわかる。

不思議だけど、わかる。



とっちゃだめー。

とっちゃだめー。


今日はがまんの『引き潮』デー。



『はい、ブルーフロントです』



ばかぁー

私のばかぁー




『(好きな人の本名・フルネーム)です。お疲れ様です。』


大好きな、穏やかな声。

ホッとする、優しい声。



あなたは、知らない。

私、せつなくて、

思わずお昼休みに、泣いてしまったことを。

誰も見てなくて、よかった…。


いくつか、紹介と縁談のお話が来た。



逢わなきゃ。

逢ってみなきゃ。


なのに、どうしてそう思うと、勝手に瞳に滴がたまるの………



私。

好きな人じゃなきゃ、やだ。



好きな人の側が、いい。



もうひとり、好きな人がいればいい。


そしたら、誰も傷つかない。


あの人がもうひとりいれば、

それだけで全てが解決するのに。


無理めなお願い。

お願い、聞いて。


もうだめ、疲れてるね、きっと私。


今日は……帰って寝よう………