前に、

『耳かきしてもい？』



好きな人にお願いをしました。


私は人の耳を掃除するのが大好きで、

おじいちゃん。

おかーさん。

おねーちゃん。

一緒に暮らした人。

ことごとく耳かきしてました。


好きな人の耳は、

たぶん、今まで見た耳の中でも、群を抜いてきれい。

耳垢の『み』の字もない耳は、

何も取るものがなく、私を感嘆させ、

一方で、私をひどくがっかりさせたのでした。



『キング・オブ・ミミアカ』(嫌だなこの称号)は、うちのおじいちゃん。

もうなんか、宝庫です。宝庫。

ざっくざっく出てくる。

ときには、1cmくらいのが出てきて、幼い私をやる気と熱気に駆り立てたものでした。


あ。

まだおじいちゃんに、

『お誕生日おめでとう』の電話してなかった。



(～～～～時間の流れ～～～～)


というわけで。

おじいちゃんに電話しました。

元気そうでよかった。

おじいちゃん、大好き。

私はめちゃくちゃおじいちゃんコでした。

明るくて。のんきで。前向きで。

お散歩、遠出が大好きで。


ちょこっとだけ、好きな人は、

おじいちゃんを思わせます。

おじいちゃんより、のんびり屋さんに見えるけど、ね。



そういえば………

明日、修二のお誕生日だ。

謝れたらいいのにな。

あのときはごめんなさい。

しあわせでいてね。

そう言いたい………



好きな人と、

修二は、

時期は違うけど、

ふたりとも、昼と夜の長さが同じになる日に生まれたんだ。

好きな人は、

お誕生日半年おめでとう。

修二…好きだった人は、

お誕生日おめでとう。

たくさんいろんな人がいるのにね、

あなた達を、好きになったんだよ、私。

生まれてきてくれて、ありがとうね。



話、それちゃった。

とにかく私は耳かき大好き。

『ミミカキマーメイド』と呼んでください。嘘。やっぱやだ(笑)



で。

掘る(掘るって…)ものがない、好きな人の耳は、美しく、そしてせつなく。

話によると、しょっちゅう綿棒で掃除するからなのだとか。

なぁんだぁ………しゅん。



そしたら。

耳かきするときと、逆…つまり、私がいる側に、顔を向けて。

好きな人が、まるで膝に乗せた猫みたいに、すりよった。


なんだか可愛いなぁ……


とても嬉しかったから、

耳かきを置いて、

そっと、好きな人の頭をなでた。

いいこいいこ。

いいこいいこするとね、優しい人になるんだよ。

そおっと抱きしめるとね、思いやりがある人になるんだよ。


ずっと、こうしたかったの？


いいよ。

いつだって。どこにいたって。

私はあなたを大切に想ってるから。

いつだって、こうしてあまえてね。

たくさん、あなたが、居心地よく過ごせるように…………

いっぱい、いいこいいこするから。

たくさん、ぎゅってするから。

私の、大切な大切なたからもの。